秋月電子で2SC1815GRの1000個入り3000円というのを買ったまま使わずに放置していたのでこれを使って何か作ることにしました。
第一弾としては「2SC1815 4パラレル・プッシュプル(4パラPP)のRFパワーアンプを作る」これを目指してみます。
簡単なんですぐに終わると思ってたのに、ものがすごく時間がかかってしまいました
今回の実験内容が多くの初心者の方に参考になれば幸いです。
設計目標
1石あたり100から150mWくらいを想定すると8石あれば1Wくらい出せると思いました
用途は決めていませんがAB級動作で使えるようにしておきたいです。
昔のことですがCW送信機を作っているときに2SC372で200mW程度出せたことを思い出しました
C級動作ならもしかすると4パラPPで1.6Wくらい出せるのかなって夢想しました。
実際に作ってみます
1000個もあるので選別してhfeの揃った10個を1組として3組ほど用意しました
バラツキが多くて300個以上チェックしてようやく揃った3組が作れました。
回路図を書いて基板をデザインしたら中華へ発注です
配線経路は手抜きなので入力から出力に向けて一列の配置です、トランジスタ毎に信号経路の配線長が異なりますがHF帯なので繋がってりゃいいでしょって思いました。
それとバイアス回路も搭載しています
回路図はこれです

複数の並列接続で安定動作を願いベース側に10Ωを入れています。
バイアス回路も搭載しています、バイアス回路はトランジスタを使って定電圧回路としバイアス電圧用に0.7Vが要るのでベースは1N4148を2個直列にしています
このダイオードはPPアンプの温度補償用に熱結合させて使います。
バイアス回路の詳細は後で書きます。
基板はこんな感じです、テスト結果としてはデキの悪い失敗作と言えますから悪いお手本としてください。

部品を実装するとこんな感じです、CADの3D画像です

基板が届いたので早速部品を取り付けてバイアス調整用のボリュームは絞ってC級動作で試してみました
あれ? どういうことパワー出ないじゃん なんじゃこりゃあ
C級動作なので入力感度が悪いです(当たり前の話しですが)、ドライブレベルを上げ行くと あー 出ました 800mW程度かな 動作しているようです
出力側のトランスが上手くないのか期待したほどのパワーは出ません
最初は1.6W位はでるのかと思っていましたが12V電源で800mWくらいしか出ませんでした
LPFは付けないままオシロで計測していますから高調波も含めてのパワーです、細かい事はこれからの作業で改善していきます。
ドライブを止めてトランジスタを触ると殆ど熱を持たないのでこれなら放熱器無しでQRPのCW用として問題無いと思いました
C級動作としてはこんなものかなってことで次はバイアスをかけてみます
ボリュームを回してベース電圧を上げていくと、最初は5mAくらい8個で40mAですが、ボリュームを回すのをやめても電流が勝手に増え続けるのでバイアス電圧を少し下げてみますが、とにかく40mAで固定できないのですどんどん増えていきます
あー なんだかダメっぽいな こりゃあ熱暴走するわ!
手短にパワーを測ってみましたが 効率が悪いです 10%から15%くらいかな
入力を止めても電流が下がらなくなりますね、トランジスタが過熱してどんどん熱くなり電流も増大するしで結局早々に熱暴走しました。
電源を切って冷えた後で再度試してみます、アイドリングを0から徐々に上げていくと途中から勝手に電流が増していき暴走の始まりです
最初のテストを始めた時よりも一段と暴走しやすくなりました、ということは暴走癖が付くようですね
8個ともトランジスタを交換して熱暴走の様子をもう少し調べてみることにしました。
このテストは負荷にダミーは接続していますが入力は入れずに安全に流せるアイドリングの調査作業です
その結果はどうやら1石あたり2mAか3mA程度が限界なのかもしれません、ですがそのまま様子を見ていたら少しずつ電流が増え始めます、電流が増えると熱が出ますから更に電流が増加します
しばらくしたらどこかで熱安定するバランス点があるのかと思っていたら、この様子は次第に加速していき結局熱暴走してしまいました
これで熱暴走列車の爆誕です
ダイオードで温度補償をしていたつもりですが全く追いつかないようです、とにかく効きが悪いですがこれについては後で説明します。
ダイオードをトランジスタに密着させるためにこんな感じで挟み込んでいます

分かりにくいかな
2列並んだトランジスタの中間あたりに1N4148を2個直列に接続して差し込んでいます。
一番過熱するトランジスタのところへ密着させた方が良かったかもしれませんる
ここまでの実験ではっきりしたことは「2SC1815のエミッタをベタアースした回路でバイアスをかけると確実に熱暴走をして使い物にならない」ということです
エミッタとコレクタには電流制御用の抵抗がありませんから当然の結果と思います。
温度補償が機能していたら結果は異なったのかもしれませんが個人的には不安定要素が高いと判断しました。
8個も狭い間隔で並べると余計に熱がこもりやすく放熱には不利なのかもしれません
この実験をしている室温は27度から28度です、もう少しデータをとりたいのでファンで冷やしながら実験を進めることにします。
入力側のトランスはそのままにして出力側だけ巻きなおしてみます
コレクタ側をバイファイラ4Tと出力側はリンクコイルとして3Tにしてみました、線材は0.2ミリのウレタン線です
これでC級動作だと1.2Wくらい出るようになりました、実験しすぎてどれがどの時のデータなのか分からなくなりましたので出力だけ記録しておきます
とりあえずC級動作では改善されました、効率は60%近くあったように記憶しています。
続いてAB級動作ですがアイドリングを流すと熱暴走を始めるのでファンで冷やしながらテストします
短時間だけドライブをかけて計測し出力を見ると1W近く出ているようですが冷却が間に合わず熱暴走をしかけています
実験中に電話がかかってきて気が散ったすきに過大電流のアラートが鳴ったので電源を切りました
目を離したのは、ほんの数秒なんですが・・・
これで再びトランジスタを全交換することにしました。
とにかくアイドリングを流しちゃいけないわけですね
全交換するついでに初心に戻りどうなっているのか調べることにしました。
パラ接続無しでシングルPPで動かしてみました、どうせ熱暴走するからC級動作でテストします
そしたら驚いたね
シングルPPはなかなかよく働きます12Vで140mA流れて744mWも出ます
1.68W入力ですから効率は44%です。
この時の1石あたりのコレクタ損失は1680-744÷2=468mW ということで損失はオーバーしていますがC級動作なので動作角が小さいため問題無く動作しているようです。
次に2パラPPだとどうなるか
12Vで152mA流れて1.037Wでました、同様に計算すると効率は56.9%で1石あたりの損失は196.75mWです
このことから仮説を立てると2パラにしてもパワーは2倍にはならないが損失は分散しているということです。
続けて3パラ目を取り付けてみましたが、殆ど出力の増加はありませんでした、ですが損失はさらに分散されて1石あたりの負担が減るので役に立たないわけではないと判断できます。
とりあえずシングルPPと2パラPPの動作については表にしていたので載せておきます
出力はLPFを通さずに測っています、測定周波数は7MHzです。

C級動作ならいい感じだと思いました、低い電圧の方がインピーダンス的に相性がいいのかそれともトランジスタの動作として余裕が出るのか知りませんが効率が良くなります。
ちょっと順番が悪いのですが熱暴走をして異常過熱したときの様子をお伝えしておきます
熱暴走は決してすべてのトランジスタで同時に起きるわけではないです
特定の1つから始まります破裂するまでは主にその一つに電流が集中するようです、今回の基板でいうとここですね、この画像の赤い枠のところです。

理由を考えると、ここが一番グランド面のインピーダンスが最も低いと回路は思っているのでしょう、この位置は電源供給ラインのグランド側に最も近いためリターンパスとしてそのようになったと推測されます。トランジスタのバラツキも少しは関係あるのかもしれませんが何度全交換してもこの位置のトランジスタから熱暴走は始まります。面白いですね。
ここまでの内容で重要と考えられる問題点を整理しておきます
何と言っても基板の配線経路がダメダメってことです、波長的に問題無いとナメていましたが一列に直線配置して入出力ともに配線経路の長さが異なるため位相ズレが無視できないようです
エミッタがベタアースなのである程度以上の動作領域では高周波的にここのバランスが乱れて期待した効率的な動作ができないのだろうと推測します
熱暴走を始めると250mAくらい簡単に流れてしまいます、8個で割ると1石あたりたったの31mA強ですが暴走時は特定の1石に電流が集中するようです、そのまま放置するとトランジスタが破裂します。 オーこわっ
そのため入力を切っても暴走体制に入ってしまうと特定のトランジスタが異常過熱して破裂するまで続きます、電源を切るしかありません。
ここに書いた内容の何倍もの実験データなので省略説明してもこんなに長くなるのでうまく行った結果だけを知りたい人は最後の方だけご覧いただくのも有りです。
これまでの実験で感じるのは多数の並列接続は奥が深いなと思いました
LPFを付けるとパワーが減りますそれと無選別の2SC1815での挙動は予想できないので4パラPPを安定して動作させるには更なる工夫が必要と感じました。
帯域については測定機器の信号発生器の都合で30MHz以下のみ行っています、30MHzを超えると出力レベルが上げられない仕様なので50MHzあたりテストするにはドライブレベルが足りずアンプは動きますが本アンプの利得の低下もあり個人的には実用性は見いだせないため悪しからず
アンプの利得が十分にあるのは17MHzくらいまでです、10MHzを超えてからの利得低下はダラダラとした感じで下降するのでマルチバンド機への利用は難しいと思いますがモノバンドでそのバンドに応じたレベル設定で使えばいいと思います。
1枚目の回路と基板はこれで終わりとして、問題点を改善するために新たに新たに基板を注文しました。
それと選別のトランジスタが足りなくなったので今度は400個くらいの中から4組ほど用意しました。
改善ポイント
2SC1815とトランス間の配線長をできるだけ同じにしました、片側4個をすべて揃えるのは物理的に難しいので最初の実験で得た2パラまでは比較的ズボラでも行ける感じだったので2石1組で構成し、その2組をコの字型に接続し、さらにその中点からトランスへいく 書くと意味不明なので画像で読み取ってください。
ベースとコレクタについてはこれで配線長をそろえたので位相ズレの問題は少し改善できたはずです、エミッタについては一点アースが物理的に困難なのでそれぞれ最短で抵抗を経由してグランドに接続しました。
各トランジスタの動作を確認するためと安定性を重視してエミッタ抵抗を入れることにしました。
1台は抵抗だけです、もう1台は抵抗とパスコンを入れることにしました「※パスコンは基板上に取り付けるパッドは用意していませんから抵抗の上に重ねて取り付けます」
バイアスの件が気になっていたので定電圧回路用のダイオードを2つから4つに変更しました。

回路的にはエミッタに抵抗を入れた程度のことです、先ほど書き忘れましたが入力トランスの前に3dBのpadを入れています。回路図ではバイアス用の電圧を決めるダイオードD1は1個ですが実際には1N4148を4個直列に接続して使います。
基板の様子はこんな感じです、この基板サイズは秋月電子で売っているユニバーサル基板(72ミリ×47ミリ)のサイズとネジ穴の位置も合わせています、なんとなく部位によってはユニバーサル基板で作って色々なユニットの組み合わせで遊び方を広げられたら楽しいかと思ってそうしました。

部品を取り付けるとこんな感じになります

裏はこんな感じです

ここからはエミッタ抵抗を入れて動かしてみます
手始めに1Ωを入れてみました、これならパスコンを追加しなくても僅かな利得低下で済むでしょうしベタアースよりはマシだと思います。
これと対比テストするために10Ωの抵抗を使ったのを用意しました、10Ωだとさすがに利得が低下してどうにもならないので0.1μFのパスコンを追加しました。
いろいろ実験してみて意外なことがわかりました
1Ωでも有ると無いでは大違いでとてもいい感じで動作します、もちろんバイアス回路が安定動作していてダイオードによる温度補償が良好に働いていることが前提です。
バイアスについては後で説明します。
10Ω+パスコンの方はパスコンがあるせいで良好に動作します。
抵抗だけのものとパスコン付きのものとを比較した場合、パワー的にはどちらも似たようなものです、しかし重要なことがもう一つあります、それはワシは選別した2SC1815GRを使っているので動作中も大きな個体差は発生しません、正確には10Ωくらいないと個体差を吸収しきれない気がします。
無選別で8個も使うなら10Ω+パスコンの方式をお奨めします。このあとで特性の違いを載せますから、いずれの方法がいいかはの判断は個人差があると思います。
こんな感じで色々試しながら進めていますが1Ωの方は意外なことでボロが出ました。
最大出力を確認しようと思いドライブレベルを上げて意図的に飽和状態にしたら、エミッタ抵抗が1Ωのユニットはオーバードライブで熱暴走をしてしまいました。
どうやら余裕のないギリギリの動作なんでしょうね、ある程度以上の電流が流れるとhfeをそろえていても動的な特性はズレてきますからバラツキの差が拡大し最終的には1Ωの抵抗で制御できる範囲が狭くて熱暴走をしてしまったようです。
万が一を考えるとこれはダメですね、ですがエミッタ抵抗を入れることで制御しやすくなるということはわかりました。これでまた一歩前進です。
ダメもとで1Ωから3.3Ωに変更してみました
これがまた期待以上に良好な動作をするんです、パスコンを入れる必要もなく利得の低下も少しなので個人的には一番気に入った動作をします
しかもオーバードライブにも強くなり計測時にも安定動作していました。
ちょっと余談ですが、2SC1815の代わりに別のトランジスタに変更して試してみましたが、どうやら2SC1815のようにはならず偶然とはいえこの抵抗値は2SC1815限定と考えた方が良さそうです。
次は入出力のトランスについての考察です
入力トランスは決め打ちで巻き4対1のインピーダンス比にしています
C級動作のみで作る人はバイアス回路も省けます
C級動作の場合、比較的動作インピーダンスは高く、しかもダイナミックに変動するため入力トランスは1対1でも問題ありませんしトリファイラ巻きでいいので作るのもドライブも楽だと思います。
バイアスをかけるとトランジスタの入力インピーダンスは低くなるのが普通です
それと意図的に低いインピーダンスで使う方が暴れが少ないため有利です
これは4対1の場合50Ωを12.5Ωとしてベース側をドライブします
ベースに入っている10Ωですが片側4個入っているので並列で計算してベース側は2.5Ωが直列に入る計算です。
さらにインピーダンス整合が大きく崩れないように3dBのpadを入れています
入力トランスは手持ちの小型メガネコアを使いましたが、だれでも入手できる材料の方が望ましいと思いFB101-43を2個接着してメガネコア形状にして使っています線材は0.16ミリのウレタン線です。バイファイラ2Tをベース側に、リンクコイルとして4Tを入力側にして使います、これで2対1の巻き数なのでインピーダンス比は4対1となります。
入力側のインピーダンスを仮に12.5Ωとした場合、バイファイラ2Tでのインダクタンスは9.4μHありましたから2MHzの時のリアクタンスは118Ωなので5倍以上高いので十分に2MHzに対応できます、実際にアンプの帯域を測ってみたら1MHzあたりも使えるのでこれで良しとします。
次に出力側のトランスですが先ずはコレクタインピーダンスを計算してみます
以下は一般的な式です。
Vccは電圧
Vsatはトランジスタが完全にONしたときの残留電圧
Poは予定出力
経験的に近似値が分かればいいので以下の計算式で行いますVsatは式に含まなくてもいいです。
$$R_{L}=\frac{(V_{CC})^{2}}{2P_{o}}$$電源電圧を12Vで1W出力を予定したばあい
12×12÷2=72Ω ということで70Ω前後を目安にトランスを考えます。
使いたい最低周波数で計算するといいです 例えば2MHzとしたら
2MHzで70Ωの5倍以上のリアクタンスがあればいいですがロスを更に減らすためには10倍以上を目標とします、700Ω以上として考えると2MHzでは60μHで754Ωのリアクタンスです
28μHだと352Ωくらいあるので最低は28μHを確保できるように考えるのが望ましいです。
計算的にはこんな感じですがとにかく多めになる方が動作上は良かったです。
利用できるコアはなかなか見つからないですね、メガネコアでつくるとカッコいいと思いますが地方では余計に入手が難しいです
それで仕方なくビーズを接着してメガネコアもどきとしてみます「正しくはメガネコアとは程遠い性能ですから期待しないように」
サトー電気で買ったビーズが穴のサイズが都合が良くてこれを使ってみました
ですがこのビーズはどう考えてもEMI対策用なのでAL値が高すぎます
1回通して3.5μHありましたのでAL値は3500ってことでしょうか、ですがこれを2個接着してメガネコアとして使いました。
出力トランスはバイファイラ4Tとアンテナ側がリンクコイルとして3Tにして1次と2次を別々に巻きます、これが試した中では一番調子がが良かったです、因みにバイファイラ4Tですがインダクタンスは500μHもありますがちょっとやり過ぎですが意外にうまく使えます。
その後入手性と作りやすさを考えてFB801-43で実験してみました、初期の段階で試してみてダメだと思ったコアですが再度巻き方を変えて使ってみました。
一番成績が良かったのがFB801-43にトリファイラ巻きで4Tのものです、2本はバイファイラ接続して、残りはリンクコイルとして使いました。見た目は不細工ですがとにかく最も良い結果が出たのです、何だか遠回りした気がしました。
最初に試してダメだった巻き方、それとトロイダルコアも試してもダメだった共通のダメな理由は1次側と2次側を別々に巻いたのが原因でした、思った以上に結合が弱くロスが大きいことがわかりました。
結果的にトリファイラ巻きなら結合が良いみたいで予想外でした。
最終的にお奨めの出力トランスはFB801-43にトリファイラ巻きをすることです。これなら入手性も高いですし再現性も高いため実験中のユニットは全てこのトランスに変更しました。

⑤がFB801です、②がFB101、④はビーズを2個接着して作ったメガネコア
①と③は本物のメガネコアです
FB801-43に取り換えた様子はこれです

出力トランスはビーズにトリファイラ巻きすることで解決しました実験した中では一番成績がいいので、もしかすると入力トランスも無理してメガネコアもどきにしなくてもビーズかトロイダルコアにトリファイラ巻きすると、そこでのロスが減ってもう少し小さいドライブで良いのかもしれません、気が向いたら試してみます。
バイアス回路とダイオードについて
一番最初に作った基板で温度補償がほとんど効かなかった原因は意外なことでした
単純に自分が無知なだけです。
トランジスタを使って定電圧回路でベース電位を決定するのがベース側に入れているダイオードです、2個直列にしているのは1個分は定電圧用のトランジスタに食われるから、それのエミッタから出力される電圧はこれで約0.7V弱となります。ここまではご存じのとおりです。
ワシの失敗は1N4148の温度計数は1度あたり2mVの変化と決めつけていたことです
調べてみたら1N4148は電流を大きめに流すと1mV以下になることがわかりました。
1mAくらいで使えば2mV程度の温度係数として使えるようです、しかし10mA以上流して使っていたことで温度補償のための制御が追い付かず簡単に熱暴走させていたと考えられます。
ではなぜ10mA以上も流していたのか、ここがポイントです
定電圧回路の出力が実測で0.64V程度しかなくてバイアス調整用のボリュームは殆ど最大の付近になっていました、この安物のボリュームは回し切ったあたりは接触不良が大きくて安定しないのです、つまりアイドリングの調整には使いにくいものでした、基板を指で弾いて振動を与えてもバイアスが変化するため危険です。
それで0.7V近くまで上げる目的で1N4148への電流を増やしました、こうすることで0.67V近い出力が得られたのでボリュームを比較的安定したところで使えるようになり納得していました。
ですがこれが原因で温度補償としては効き目が期待できないものとなっていました。
2作目の基板を作るときにこの件の改善も含めてダイオードを4個直列に使うことにし電流も少なめにしました。ダイオードは3個でもいいのですが8個のトランジスタに密着されるには3個より4個の方がバランスがいいので・・・
それと定電圧回路にも温度係数の変化分を食われてしまうのとボリュームのところで抵抗による分圧も発生するため2mV×4=8mVの変化を確保したとしても夫々でロスすることを含めて最終的には半分と思って考えるべきです、つまり差し引き4mVの変化が利用できるのでこれなら効きのいい温度補償ができます。
実際にこの考えに基づいて使ってみますと少し補償が効きすぎなんですが、発生した熱でバイアス電圧が低下するのでパワーを出すほど温度が上がるのでアイドリングが減ります、ですがこれくらいがちょうどいいように思います。

効き目を試すのにダイオードをトランジスタの上に乗せてセロテープで仮止めしています。

最終的には接着剤で固定したあとでシリコングリスを塗りました、10年くらい前に買って放置していたらグリスも干からびてる感じがします。
測定環境について
いろいろ実験してみて分かってきたので仕上げに入ります、その前に測定環境について説明しておきます。
下図のような系統で測定しました。


デバイダーはこんなのを作りました。
本来は①と②のポートは50Ωでポート③は25Ωです、意図的に200Ωのボリュームを入れています。

こんな感じでポート①に信号を入れて、ポート③の負荷には25Ωから50Ωに変換する何かを入れるべきなのですが強引に今回のアンプを接続します
この状態でポート②のところをオシロで計測し漏れが最小になるよう200Ωのボリュームを調整します。
これはアンプは50Ωで設計しているつもり、3dBのpadも入れている、全体として50Ωのつもりですが実際はどうなんだかわかりません、それらも含めて漏れを最小値にしておけばベストなアイソレーションで使えるはずなので理屈抜きにそうしました。これを今回の物差しの一つとすれば絶対値は知りませんが相対値は十分な環境として使えるはずです。
IP3を測るための準備ですがアンプの出力はLPFを通してダミーを接続しているのでここの電圧をオシロスコープで計測しrms表示したものをWに計算しています。
オシロスコープは十分に帯域の広いものを使う必要があります、仕様書に50MHzとなっていたら25MHzでも使えないと思います、厳しく見ると3分の1程度までしか使えません、波形は70MHz程度も表示できますが入力感度は仕様書の50MHzは半分くらいになっています、ようするに正確に電圧を測れないということで、HFの広帯域アンプですらまともな計測はできないのです、この実験には250MHzのオシロスコープを使っています。
ダミーには約30dBのATTを取り付けているので、そこからtinySA ULTRAに接続しています。
信号発生器はファンクションジェネレータ(FG)を使っています、50Ω出力が2系統あり50MHzまで使えます、設定した電圧や周波数を正確に出力します。
測定しているときの様子です

リニアアンプと言えばみなさん入出力のレベルをプロットして、さあこれでどうだリニアだぞっていうのがwebではよく見かけますけど、今回の2SC1815GRの4パラPPは正直言って直線部分を探す方が難しい気がしました、電圧でグラフにするとカーブしているしdB表示は見せかけ良い感じにはなりますが何だか違う気がするしでもっとはっきりわかりやすくするためにIP3を測ってみました。
では実測してみます、画像にある例として218mW / R3.3と書いているものは出力218mWでエミッタ抵抗3.3Ωのユニットです、300mW / RCとあるものは出力300mWでエミッタには10Ω+パスコンのユニットです、電源電圧は12Vでアイドリングは64mA(8mA/1石)に設定しています。








No.7とNo.8のドライブレベルのまま13.5Vに電圧を上げたのが以下のデータです。



1MHzから100MHzまでのspanです、これはどちらのユニットもほとんど同じスプリアス特性でした、この時の出力は忘れました1W以上は出ているのですが。
最大出力は8Vrmsを少し超えていたので1.3Wの時のデータかもしれません(メモを無くしたので・・・)
出力トランスによってはもう少し低い出力の段階で特性が悪化しましたがFB801-43にトリファイラ巻き4Tはうまくバランスしているようです。
エミッタに3.3Ωを使ったユニットは妙にIP3がいいです700mWくらいまでは-40dBくらいです
本当に相性の良い組み合わせになったんでしょうね、抵抗だけなので交流帰還・直流帰還の両方とトランジスタの内部抵抗が作用してこの結果なんだと思われます。
10Ω+パスコンの方は平凡なところに収まっています、興味深いのはパワーの大小にかかわらず、だいたい-26dB前後と言うことになりましたがこの数値に対しての評価も個人差があると思いますし一部のメーカー製でもこの程度しか取れていないことがありますから何とも言えません。
どちらのユニットも800mW以上は一気に悪化する傾向があるのでご注意ください、CWでしか使わないという事でしたらC級動作オンリーも悪くはありませんが、バイアスをかけるとドライブレベル的に楽になるので調整しろの一つとしてバイアス回路を搭載しておくのはいい事だと思います。
遊びついでにエミッタに10Ω+パスコンのユニットに3dBほどNFBをかけて計測してみたら少しIP3が改善されました、ですが7MHz以下では多少の利得低下は何とかなるので6dBほどかけてもいいのですが高い周波数では利得がそもそも少ないのでNFBの効きも悪化するし感度はがた落ちになるしで広帯域アンプとしての改善は見込めません。動くと使えるは別物なので一般的にwebで見かける作りました動きましたはどうかと思います。
スプリアス的にはLPFで実用十分な特性で使えますから高調波の心配はしなくていいと思いますがIMD特性の悪い領域は受信された方がサイドの広がりを感じられるかもしれません。
シングルトーンで7MHzでの利得を測ってみました、1W出力「LPFを通した出力です」の時に入力は16mWでしたから入力の3dBのpad込みでユニット全体は約18dBの電力利得のようです。
それと余談ですが
今回は12Vを中心に実験をしましたが14Vでの動作も確認しています、固定機などは13.8Vの電源を使うので、これのために12Vを用意するのも手間だし、13.8Vから12Vを作るのはもっとめんどくさいものです。そのため気にせず13.8Vで使えばいいと思います。
まとめ
2SC1815GRを使って4パラPPアンプを作ってみました、利得は低下するものの29MHzでも1W強の出力がありますから約1.5MHzから30MHzの広帯域アンプではあります、ただ周波数によって利得の変化が大きいので、このユニットを使ってマルチバンド送信機とするのはスマートではないと思います。
AF用の小信号トランジスタでこれくらい使えたら十分なのではないでしょうか、ファンレスで使えるし筐体に入れて使うことも想定して温度特性を考慮した定数にしています。
無選別の2SC1815で4パラPPを作るなら安全性から判断して10Ω+パスコンがいいです
SSBにも使うなら特性の良い3.3Ωだけのほうが美味しいのも事実です
何を求めるかでベストな答えは変わると思います
用途によっても変わってきますから興味がある方の参考になれば幸いです。
今回の実験で以前に作った「簡易なSSBトランシーバー」のIMD特性が期待したレベルに達していない理由が少しわかった気がします、それはドライブ段の使い方が悪くて、既にドライブで歪んでいるのでしょう、時間が有ったら少しアレンジしなおして再度測ってみようと思います
これで終段だけでなく、それ以前のヤンガーステージも慎重に考えないとダメなんだなって反省させられました。










コメント