簡易なSSBトランシーバーを作ってみた

radio-etc
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2026年6月5日
今回の主題は、この方法はどんな結果になるのか知りたい

40年以上も前から時々思い出しては気になっている案1(以降IFユニットとします)の構成で受信機は成立するのか?
ついでにトランシーバーに利用したらどうなるのか?
ずーっと気になっていました

そこで思い切って作ってみることにしました。

ではSSBトランシーバーを作ってみましょう

SSB用のフィルターをミキサで挟んだだけのシンプルなものです
意図的にアナログミキサーを使います、回路で描くと図1のようなものです

ざっくりですが検波回路まで含めて総合損失は18dBから20dBあるとして考えます
これが利得ならいいのですが損失なので-20dBというのは作るまでもなくアホ丸出しの構造です
実際にアナログで同様な感じのものを作っている方はおられるはずですがwebでは見かけないです・・・

ロスは大きいのですが最大の特徴は完全に双方向で使えることが唯一のメリットと言えます、それを除いたら全て欠点だらけです。
回路内の反射を考えると問題だらけで先に進めないので双方向性のみをメリットとして進みます。

IFユニットのままでは使えないのでトランシーバーとするために全体は次のブロックダイアグラムのように作成します

IFユニットのミキサ2は図1にあるように受信時は検波回路、送信時は変調回路として使います
信号経路の切替SW-2とSW-3はアナログスイッチを使いました(よく見かけるダイオードスイッチは使っていません)
VFOとBFOはSi5351で同時に2波発生させています、マイコンはArduino PRO miniの3.3V/8MHz版です。

昔と違って今はCADで描いて中華にネットで注文しておけば1週間程度で基板が手元に届くので楽勝です、それに安いですからありがたいです。

回路図はこれです

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作った基板をご紹介しときます

受信感度は想定通りになり4μV以上が実用感度と思われます、SSGの出力を下げていくと1μVも聞こえます
ですがQRPだし、もともとEスポ専用機で考えていたのでこの程度で十分でしょう。
受信の音量は素直に信号強度なりの大きさです、そのため音量ボリュームの位置で凡そのSを表現できる感じです
SSGから5mV(S9+40dB相当)入れてみましたが特に歪んでいる感じは無く綺麗に聞こえます。

IC-7300と聴き比べをしたらIC-7300でS1程度の弱い局も本機で聞こえます
S5を超える信号になると、とても快適に聞こえます
AGCが無いので信号の強弱に応じてボリュームの調整は忙しい事もあります。
今のところ、信号が強すぎてANT側にATTを入れたいと思うよなことは発生していません
夜間の強力な放送局からの混変調も感じられないですしいい感じに動作していると思われます。

電源は乾電池5本か6本、あるいは7.4Vのリポを予定しています、実際に動作する電圧は5.5Vから9Vの範囲です
送信出力は7Vの時約400mWになりました
終段にはNFBをかけていることもあり電源電圧の違いによる出力の変動はとても小さいです。

もともとは21MHzのEスポ専用機として計画しましたが、実用になるかどうか分からなかったので局数の多い7MHz用で作ってみました
それと最近は1KHz間隔で運用されていることが多いようなのでVFOのステップは初期値を1KHzにしました。


ここからは回路の説明とか問題解決の話しです

受信関連
RFアンプ(3SK294)で26dB(実測値)、AFアンプは総合で72dB(NJM2746で32dB、TA7368Pで40dB)
※一般的なところでは、この種のものは総合利得が足りないのですがなんとかなるでしょう。

送信関連
マイクアンプ(NJM2746)は24dBとしてみました、ドライブは2石で52dB、終段はRD01MUS2で17dBは確保できていると思われます(NFBを6dBくらいかけています)

VFOとBFO
Si5351aのclk0(BFO)とclk1(VFO)を利用しMCUはArduino PRO mini(3.3V/8MHz)
現状は7.109MHzあたりに受信時ビートが入ります、今のところ気になりませんがPLLのAとBのVCO発信周波数を変更すると改善するかもしれません。

表示器
OLEDのSSD1306/128×32ドットを使います
表示させる情報量が少ないのでこれでいいのです。

信号の切替
送受信時の信号切り替えはアナログスイッチのSN74LVC1G3157を使います
ANT切り替え(SW-1)のところは2N7002を使って送信時は受信回路への経路をハイインピーダンスにして切り離すようにしました
動作テストしてみましたがQRPなら問題なく使えるようです。

その他
21MHzのハンディー型を想定し徒歩移動時にEスポで遠方と交信する前提で考えていたので送信出力は200mW以上を目標にしています。
試作品として7MHz用で作りますが、うまく行ったら21MHz用を作る予定です
もともとEスポ専用機としてオモチャのトランシーバーを計画していました
動作確認するには局数の多い7MHzがベストかと思います
7MHzだと400mWくらい出せるかもしれません
受信感度は7も21も同等なはずです、Eスポ専用機として考えると50MHzの方がいいのかもしれません

AFのプリアンプにはオペアンプを使いました、2ユニット入りのオペアンプなので残りユニットはマイクアンプに使います
利得設計が簡単なのと出力インピーダンスが低いのでトランジスタで作るより合理的です
ちょっと思うところがあって単電源で出力だけレールtoレールのNJM2746Eにしました。

RFアンプは実測で26dBの利得があるようです、IFユニットで仮に20dBロスったとして差し引き6dBと思え旧式のダイレクトコンバージョン受信機程度の感度は確保できるはずです。
それとRFアンプに続くミキサはND487C2-3Rにしてみました、ND487C1-3Rよりも順方向電圧が高いので歪みにくいように思います。

送信のドライブ段は試作時は1石でやってみましたがミキサ出力が小さくて終段をドライブしきれないので2石にしました
2SC1815の同等品にあたる2SC4116(とても小さなSMDです)を使いました
終段にはRD01MUS2を使います、試作時はAFT05MS004Nを使ってみましがLDMOSは入力インピーダンスが低いため今回の目的には使いにくかったです。
総合で送信部の高周波段は3段のストレートアンプになります、高い周波数になると利得が低下しますから21MHzはドライブ不足で出力が小さいと思われます、7MHzでの動作を確認し21MHzの時には定数の調整をして乗り切る予定です。
今更ですがドライブ回路のトランジスタは2SC4116ではなくてSOT-23のトランジスタにしておけば選択肢が広がって良かったなと反省しています。

アナログスイッチについて
SN74LVC1G3157は上限の5Vで動作させています、各ポート(A・B1・B2)は基本的に抵抗でプルダウンしています
プルダウン抵抗は無くても動作することは確認していますが電位を安定させることと信号経路に入れている結合用コンデンサの放電先負荷があるといいのでプルダウン抵抗は省略しない方がいいです。

各ポートをプルダウン抵抗式で使う場合は小信号しか扱えません
波形を観測してみたら0.6Vpp(600mVpp)までは歪は無く良好に使えますがそれを超えると歪が出始めます
だいたい650mVppくらいから波形に歪が見えるようになりました、700mVppはハッキリと歪んでいる様子が見えました。
大きな信号を扱うなら1/2VCCにバイアスした方がいいようです。
今回の使い方ではそんな大きな信号を通すことは無いためプルダウン抵抗(抵抗値は回路インピーダンスに影響を与えない程度の大きさにすればOKです)で済ませています。

当初の予定とは裏腹に、もっと単純化できるはずだったのですが実用性を考えると部品数が増えてしまい面倒なモノになってしまいました。

ラダーフィルタの件
IFユニットのラダーフィルタの特性を測ってみました、インピーダンスは計算上では130Ω程度のようなのでFB101-43で1対4のトランスを作って50ΩとみなしてNano-VNAで測ってみました、それがこれです

何度も確認しましたが通過ロスがとても小さいのです ほんまかいなって思っています
-3dBくらいなんですね んー ロスが小さすぎます
でも多いよりはいいのでロスが少ない理由は考えないで進めます。

曲がりなりにもSSB用のラダーフィルタを使ったシングルスーパーです、AGCやSメーターはありませんし感度も悪いでしょうけどが単側波帯で使えるのがいいです

トランス
DBMとリング検波のトランスは巻き方を工夫して目標のインピーダンスに近づけるようにします
T1・T2はトリファイラ巻きをして全ポートを50Ωとして使うことが一般的ですが、それはダメなのでバイファイラ巻き4回とリンクコイル側(4番・6番端子)は8回(実際には6から7回がいいかも)巻いて1対2として使います、これで4番・6番端子のポートは150Ωから200Ω辺りを目指します、そうなってくれるといいのですが・・・
この方法だとRFポートとIFポートは150Ω程度で内側の回路は50Ω辺りに落ち着くはずです
※本音を言うとダイオード式DBMが50Ωである根拠はどこにもみあたりません、偉い人が言うと疑わず信じる人は要注意です。

T3の方はバイファイラ巻きなので1対1のトランスです、インピーダンスはリング回路(SBM)の定数に依存します、バランス調整用のボリュームは500Ωを使っているのでT3のトランス側は130Ωから200Ωの範囲に収まると推定されます。


検波と変調にはDBMではなくてSBMにしてみました、使ったリング回路は俗に言うコリンズ型リング回路ですがなかなか厄介な回路です
トランスを1個ケチりたかっただけですが、その代償があまりにも大きすぎました
しかもDBMよりもロスが増大する傾向があります、この回路がうまく動作しているように見えるのは前段までの回路で十分に増幅された大きな信号であることです
特に今回のように最小限の構成の場合、コリンズ型に限らずSBMは使うべきではありませんでした
とにかく最初からDBMにしておけばよかった、今回のようにSBMにしたことで欠点ばかりが前面に出て解決するのにとても苦労しました
ハッキリ言って、ただのノイズ発生器です。
激しくホワイトノイズが発生して対策に苦労しましたので少し説明しておきます

よく見かけるのはL3・C22・C23で構成したパイ型のフィルタを使っています。

ところがこれがダメなんです
特にC22のコンデンサがあるとリング回路内の反射が増大しホワイトノイズさらに上昇します。

純粋にRCフィルターが効果的でした。C22は外して150Ωと0.1uFで構成します、参考の図はテスト中なので定数が確定前のモノです。

RCRのT型にしているのは送受でどちらから信号が通ってもLPFになるようにするためです
そうしないと信号の向きによりLPFとHPFが入れ替わってしまいます。

実際のT型LPFの定数は150Ωと0.1uFと150Ωの組み合わせです、ここはインダクターではない方が良いです、それと現状は150Ω+150Ωで300Ωとなりますが、ここでのロスはもっと減らしたいのですがLPFとして効果を出すことと通過ロスの妥協点でもあります、しかもSBMのAFポートのインピーダンスがだいたい150Ω程度のようなのでちょうどいいと思います。

SBMの別の問題として発振器からの信号に乗っている余計なノイズやAM成分がそのまま出てきます、これもホワイトノイズの原因の一つです。しかも今回はOLEDに搭載されているチャージポンプのノイズまで激しく漏れ出てきます、DBMだと気にならないレベルまでバランスして打ち消されるため気付かないと思います。

次にこの発振器からのノイズを低減しSBMのダイオードが高速で確実にオンできるようにするためにSi5351からの信号ラインを工夫してみました。

clk0からSBMへの信号経路に、一般的には50Ω程度の抵抗だけですが対策としてR(10kΩ)とC(470pF)を並列にしています
10kΩと470pFを並列にしていますが、いろいろとテストした結果です、コンデンサがあるのでかなり高い抵抗値ですが十分なドライブ電圧がSBMにかかります。コンデンサがあることで矩形波の立ち上がりが鋭くなりダイオードが素早くオンになります。
それと最初は3.3VのレギュレーターからOLEDとSi5351に電源を供給していましたがOLEDが発するチャージポンプのノイズがどうしても信号経路に乗ってしまうためOLEDの電源はArduinoのRAW端子から貰うようにしSi5351とは別電源とすることでノイズが回り込まないようにしました。

基板を作り替えたり、切った貼ったのパターン改造もしたくないので既存のパターンを利用した対策の範囲でベストな結果が出せました、ただしclk0のところに入れているR60(10kΩ)とC89(470pF)は2個重ねで搭載しています「もともと抵抗だけのランドなので」。

送信部は、今回はSSB用なので終段にはNFBをかけてみました
相互コンダクタンス(gm)を200mS辺りにするためにバイアス調整をしてアイドリングは100mAほどにしています
このNFBでインピーダンスの調整をしました、NFBをかけると出力インピーダンスが下がる傾向がありますからその現象を利用して、ドレイン側が12.5Ωになるように計算してみました
7MHzでゲートインピーダンス470Ω・帰還抵抗750Ωで6dB程度の電圧負帰還がかかると思います。

送信波形をチェックしよう
1kHzと1.6kHzの2toneを入れて少しクリップし始めたところの波形は次の通りです


終段にNFBをかけているため6V弱から8V強まで電圧を変化させても出力は概ね一定で400mWくらいのようです。
スプリアス特性は画像の通りで特に問題になりそうなのは無いと思われます

500KHzから50MHzまでの範囲です、900MHzまで広げてみましたが特に問題になるようなスプリアスは見当たりませんでした。

続いてspan10KHz、RBW200Hzで見たのが次の画像です、IMD特性と呼んでいるアレでしょうかね、たいして良くないけどこんなものでしょう。

tinySA Ultraでの測定です

今回使った2tone発振器は2ch出力のファンクションジェネレーターから500mVを出力して抵抗で合成と減衰をさせてから本機に繋ぎました、わざわざ専用に発振器を作るのは面倒なのでこれでいいかと思います、周波数は任意設定できるので1KHzと1.575KHzでもいいのですが試してみると特に違いがみられなかったので1KHzと1.6KHzにしました。

反省点は毎度のことですがあります
オペアンプの使い方としては反転入力ではなくて非反転入力にしておけば良かったです、反転入力なので入力インピーダンスをあまり高くできません。
送受のミュートはトランジスタで信号ラインをグランドに落とすのはダメですね、コンデンサの充放電の影響が出てポップ音が出ます。
それからミュートをかける場所もよくないです、もっと適所を考えるべきでした、まあSSBなのでいいかなって思ってます。

調整後はとても静かな受信部になりました、最初は激しいホワイトノイズでしたから止めようかと思ったくらいです。
送信音については、別のメーカー製アナログ無線機でモニターしてみました、悪いとは思えないのですが何かしらすっきりしないのです、この音は何だか位相が回っているような音なんですね
それで最後に1つだけ改造を追加しました。

右の図のようにラダーフィルターとSBMの間にpadを入れました。

インピーダンスは150Ωで3dBのpadで計算しています。

SBMとラダーフィルターのインピーダンスに合わせています。

本当はラダーフィルター前後の2か所に挿入した方がいいのですが、これ以上に受信回路でのロスを増やしたくないので図のように1か所のみにpadを追加しました。
僅か3dBですが行と帰りの往復で6dBの減衰が見込めるので反射をそれだけ改善できると考えられます。
これを追加してモニターしてみると、さっきまでより音はすっきりしました
やはり段間にバッファの無い今回のような構造はとても難しいですね、やたら夫々の個性が目立ちたくさんの経験をさせてもらいました。

とにかくバッファ回路が無いため反射と位相ズレの問題があります、受信時は気にならないのですが送信音がすっきりしないのは群遅延位相特性の悪化だと思われます。

【感想】
昔からどうなんだろうって思っていたものを作ってみました
少なくとも意外に受信性能というのか感度は問題無いことがわかりました
それとそれぞれの回路の個性がはっきりと出てくるので、もしかすると最高の勉強教材になったのかもしれません。
今回使ったSBMの件ですがwebを見ていたら検波後に高利得のプリアンプを入れるとノイズが大きくて利得を抑えたというような経験を書かれている方もいます
実際にその経験をしているのに追及するかしないかの違いです、シミュレーションソフトだけで理屈を語る人もいますが実践で経験をすることが大事なように思います。

そんなこともあり双方向のバッファ回路も思いついたのですが、簡易な回路構成からこれ以上に逸脱してしまうといけないのでこのままとしておきます。

あっ それと今のところケースには入れていません、続きはケースに入れたら書き足すかもしれません。

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