Main_Unit_A調整

radio-etc
この記事は約11分で読めます。

今回は前回までの作業に引き続き部品を取り付け終えたMain_Unit_Aの動作テストを行います
もちろん、ここで目的の動作をするように定数の変更も発生します。
納得できる状態になったらAGCアンプのテストをしておきたいと思っています。

測定するのに、信号発生器(SSG)が必要なんですが持っていません
そこで手持ちのファンクションジェネレーターを使うことにします、通信機用のSSGではないため最少出力は1mVです。
このままだと信号が大きすぎるので60dBのATTを通して繋ぎました、これで1000分の1の信号になるので計算上は1μVとして使えるのではないかと思います
利用するファンクションジェネレーターは定格の50MHzまで出力が安定している事と50Ω負荷でも問題ない事を事前に計測済みです。

以下の手書きの図のように結線し計測を行いました。

このユニットの出力は1.5D-2Vで取り出し51Ωの抵抗で終端します、ここへオシロスコープを繋いでANT_INから入った信号がどれくらい出てくるのか計測しました。
「追記」書き忘れていますが周波数変換に必要なローカル信号(500mV)も入れています。

60dBのATTを通して供給するので1mVは1μVとなります(個人的な思惑でしかありませんが)
ところが、何をどうしようとも出力が全く出てこなくて、なんかやっちまったのかぁと原因が判明するまでしばらく悩んでしまいました。
信号を入口から確認していくとNJM1496Dの信号入力側あたりで異常発振を発見、しかしRFアンプのノートンアンプが発振しているわけではなく不思議な現象に遭遇しました。

RFアンプと1496の間にインピーダンス整合用に入れている1対4のトランス(T2)が原因のようで、これを巻きなおしたら異常発振は収まりました。

これでようやく所定の動作テストができるようになり、思った以上にIF出力の信号強度があり安心しました(テスト前は0.1Vくらいは出るのかなって思ってた、50Ωで終端だし)。
IFTのコアの調整もあるのでAGCラインに電圧を掛けます、出力が最大になるようにAGCラインの電圧を上げていくと4Vで最大になったので、以降はこの4Vを最大AGC電圧とします。
この状態で各IFTのコアを調整し最大出力がでるようにします。

とりあえず7メガ帯で確認したので3.5メガとか他のバンドを確認したら、驚いたことに21メガがさっぱり感度が悪くて使えそうにありません。
MC1496のデータシートを何度も眺めては、原因がわからず1496って10メガ以上はダメなの?
データシートを見ると急激に低下しているグラフがあるし、どういうことなんだろうって悩んでしまいました。

これもオシロで信号を追いかけるとT2のトランスの出力が想定外な事に気付きました
それで巻き数を変更したら、あっさり解決したので自分でも驚きました。
使っているトロイダルコアはFT-23-43です、これにバイファイラー巻きで5T巻いていたのを4Tにしたら上手く行きました。
ここのトランスは初期の状態では異常発振していたのでコアをビーズに変更していたのですが容量が大きすぎたみたいでビーズからトロイダルコアに戻し巻き数を調整することで異常発振もなく感度のムラも解決しました。
最初に異常発振していたのはもしかするとウレタン線を使っていますが接触不良があって正常な接続ができていなかったのかもしれません。
こうして4バンド共に同じ感度で動作するようになりました。

続いて、信号強度について考えると受信機のS9て一体何マイクロボルトなんだろうって今更ながら調べてみました。
ネットではS9は50μVだと書かれていました。
自分の印象だとS9の時、外来ノイズが低かった昔の記憶では、とてもクリアーに良好な受信音がする
近年の7メガはノイズが多すぎて滅多にクリアーに感じは無いけどね、目安としてはそういうことです。
ジェネレーターの出力を50μVから下げていきIFの出力を見ると波形から判断して感度が悪いかもって思った。

とりあえず安定動作していることが分かったので今度はAGCアンプを検討しなくちゃ
当初はAF段から取り出すことも考えていたけど複雑になることが予想されたので、ごく平凡にIF出力から取り出すことにしました。

ブレッドボードで仮組し、それらしいのを作ったら動作的にはまあまあ行けそうだったのでMain_unit_Aに繋いでみた
確かに動作はしているが気に入らない、計測時のデータから改善点を考えるとMain_unit_Aの利得が足りていないと結論。
回路図を眺めて行ったことは、まず最初に邪道ともいえるミキサーの利得を上げる事です
本来は良くない事だと思うんですけど、上げる気になったので結果的にミキサー出力が最大10dB上がりました。
方法はNJM1496Dの5番ピン、ここはバイアスピンとなっていて、ここには10kΩを使っていたのを最終的に1.6kΩにしました。10kΩのVRと入れ替えて試したら1.6kΩあたりから急激に利得が上昇し1.1kΩあたりでピーク(12Vで使っている場合)になります。
内心はこんなにミキサーで利得を取っても大丈夫なのかって思いますが、特に問題は無いように思います(ただしIMD特性を測ったらボロボロかもしれません)。

続いて、IFアンプの利得も上げることにしました。前回まではソース抵抗に220Ωを使っていましたが100Ωに変更しました、これでこの回路では許容できる範囲内での利得は最大と思われます、この時の電流は約17mAです。経験的にはもう少し流せますがバランスがとりにくくなります。

このバランスとは以下の事が理由です
ソース抵抗とドレイン側の抵抗がそれぞれ100Ωです、ここへの供給電圧は8Vです。
合計200Ωに17mAだと 200×17mA=3.4V
8V-3.4V=4.6V
つまりドレイン・ソース間(DS間)が4.6V「他のロスは無視」
さらに電流を増やそうとして抵抗を調整してもDS間の電圧が確保できなくなりマズイと言えます。

IF回路部分だけ回路図を載せておきます、最終の定数に変更しています。

蛇足ですが、FETの記号のところの番号ですが部品としてのピン番号なのですが、1番がG1と誤解されそうなので別途G1とG2の表記を入れておきました。
3SK74は今でも新品が買えるので、これを見て同じものが作れると思います。
これと1番違いの3SK73(八重洲が好きなアレ)は別物なので互換性はありません
T5・T6はFCZ14のコイルです。同調用コンデンサC83とC88の容量が違うのでご注意ください。

ここまで来ると、このユニットは良好と考えられるので今度はAGCアンプを考える事にします。
このAGCアンプとAF用LPFの件が整理できたら、Main_Unit_Bとして基板にしようと考えています。

AGCアンプですが仮組ではありますが方向性が見えてきたので、本日の時点での最終型を下記に載せておきます。

これです、特に代わり映えしないシンプルなものですがちょっとだけ説明をしておきます。

D11・D12・D13は殆どの人はGeダイオードかSBダイオードを使われていると思いますが、自分のはSiダイオードです(1N4148)
GeとSBダイオードも試しましたが気に入った特性にはならなかったです
準方向電圧が低いことと、特にGeタイプはバラツキが大きすぎるのも面倒でした、バイアスを掛けても結局トランジスタの動作開始点あたりのヒステリシス部分が不安定領域なので狙ったタイミングで安定動作させることができなかったからです
それと比べたらSiダイオードは比較的個体差が小さく狙って動作点へ持ち込めます、バイアスを掛けないと感度が悪いのですが、この回路の様にすることで問題はありません、とても高感度で使えます。

その他の特徴はAGC出力制御に最初はFETを使っていましたが0Vまで落とせなくて普通のトランジスタに変更しました。ここでの2SC1815はランクGRです。
※秋月電子で1000個2900円だったので使い放題です

R43の3.3kΩを通して「-1V」とありますが間違いでは無くてマジでマイナス1Vを供給しています。

実は最初は「-1V」はかけていませんでした、かけないままAGC制御をするとIFアンプのG2は0Vまでは落ちますが、それでも増幅作用が結構あるみたいで一定以上の信号は抑えきれずにIF出力が増大するのです。

G2が0Vの時にIFの3SK74のソース電圧を測ってみたら0.47Vありました、つまり4.7mA流れていて増幅能力があるということです。
G2は0Vでも、G1には0.47Vかかっていることになりますから当然の結果なのかもしれません。

で、少し考えてマイナスまで振れるAGC回路にするといいのかなと思い3.3kΩの抵抗経由で「-1V」を繋いでみたところ、見事にAGCレンジは広がりました。
これが思いつかなかったらANTの後ろに50dB程度の減衰量を持たせた電子ATTでも作らないと大信号に対応できないという苦しい状況になるとこでした。

とりあえず、入力信号とIF出力の関係を表にしているので載せておきます

表が読みにくいかもしれませんが説明すると
黄色の部分、入力2mV辺りから飽和して3mV以上の入力では頭打ちです。
青色の部分、AGCを掛けると出力が安定しますが3mV以上は再び増大を始めます。
緑色の部分、-1Vの回路を追加して制御範囲を広げたものです、10mV入力まで概ね制御されて安定しています。
ファンクションジェネレーターがこれ以上出力が出せないため、更に追いかけるならATTを60dBから40dBにすればいいのですが、今は試す必要は無いかと思いここで本テストは終了。

当初はPinダイオードでRFATTを作る気でいましたが、この特性を見ると抵抗で組んだ20dBのATTを作ってスイッチで切り替えるのもありかと思いました。

AGCは10μV未満あたりから効き始めています、AGCの感度は調整できますがSメーターの一メモリを3dBとしたら逆算するとS4から5あたりから、かかることになるから目標通りと考えています
全体を作ってからの調整しろもあるので、ここでは気にしないことにします寧ろSメーター回路をどこに入れるかの方が悩みです。

各部調整後の定数を変更した最新の回路図です、AGC回路はUnit_Bに搭載するので後日基板作成後にアップ予定。

回路図をPDFで見たい方はこちらからダウンロードできます。

5月26日追記 Main_Unit_Aの送信時の動作チェックと調整

受信に関しては良い感じに収まっているので後日落ち着いてから送信時の調整をすることにしました。

推測できるのは、SSBの送信時は明らかに変調後の出力が大きくてIFのゲインを絞る必要があるはず
それと、AGC回路が邪魔なのでこいつを停止する必要がある
CWにおいては同様にレベルを確認しておかないと不味いのでは・・・

まず、AGCを送信時に無効にする方法を考えて以下の回路に変更しました。

変更したのは回路の電圧を6Vにしたかったので5Vの三端子レギュレーターにダイオードを2個かまして下駄上げしたこと
Q9のまわりの抵抗値を変更したこと
AGCの効きをよくするためマイナス電源を1Vから1.5Vに変更(-1.5Vにした)「※これもあって電源電圧を5Vから6Vに変更しています」
送信時にIFへのAGC_outをデジトラでアースに落として0V固定にした

ざっとこんな感じでSSBでの送信テストをすると、なんとか2ndMixerがレベルオーバーしない範囲にすることができました。
そうは言ってもIF出力を測るとマイクアンプの出力を絞っておかないと簡単にレベルオーバーしてしまいます
マイクアンプの出力ボリュームを適切な位置に調整し、この時点でのマイク入力は最大20mVを守らないと不味いので気を付けて使う必要があります。

SSBについては、信号レベルはこんな感じでいいと思うのですがキャリアサプレションの調整はとてもシビアでRV1を調整するとピンポイントでノイズレベルまで漏れを落とすことができます
経験的にダイオード式と違って1496は温度変化に強いから安定してヌルポイントを維持できています
それとダイオード式だと位相と振幅を調整するのでUSB/LSBでのキャリア周波数の違いでヌルポイントが異なりますが1496のようなICのDBMはその心配は要りません。

これでSSBの送信については概ね問題なく行けるだろうと思います、つづいてCWの送信についても確認し調整を行います。

ローカル信号をLSB用のBFO周波数から700Hzシフトして供給し調整しました、つまりクリスタルフィルターの帯域内にシフトです。

CWの送信はBFOの周波数をシフトすることと、変調回路のバランスを崩す必要あります、そのために以下の回路の様にRV1の片側に抵抗を入れてデジトラで強制的にバランスを崩すようにしています。
これも、今までの調整時の動作で分かったことはR29が33KΩで小さすぎるはずということに気付きました、回路を考えるときにボリュームにしておくべきだとは思っていたのですがサボった付けが回ってきました。

この回路のままR29が33kΩだとすごく漏れすぎてしまいIF出力がとても大きくなりました
R29を取り外して仮付で100kΩのボリュームを付けて適正レベルに設定したときの抵抗値は63.5kΩでした。

ですが、全体を組み上げたときに固定抵抗では不安なので、今更ながらなんとかしてボリュームにしておくことを決意しました
結果は以下の画像の様に、隙間はあったので100kΩのボリュームを取り付けたところです
本来は回路を工夫して、SSB/CW共に送信出力をパネル面から調整できるようにした方がいいのかもしれませんが、最初の目標はとにかく簡易なものをと考えていたから今回は深追いしない事にします。

黄色で囲ったところが固定抵抗から半固定に変更した部分です、この程度の事なので最初からそうするように基板を作るべきでした。

前の記事に戻る こちら

コメント