ぺるけ式アンプのPart2 12V版 単電源仕様

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ぺるけさんのトランジスタ式ミニワッターの中から比較的初期のもので差動回路や正負両電源になる前の12Vの単電源で動作させるPart2 12v版(簡単2段増幅)のアンプの紹介です。回路が簡単とはいえ、それなりの部品数がありラグ版で作るのは初心者には難しいのでPCB(プリンテッドサーキットボード)にしてみました。

このPart2 12V版は意外に面白いよ、初心者の方が初めてのアンプ作りにもいいし、ベテランにもいい、差動式回路で失ったも味も、このアナログ式ディスクリートアンプにはある。

※ぺるけさんの公式サイトでの記事はこちら

本記事で製作したアンプのキットはこちらです。

難易度★★


目次

1. Part2 12V版のオリジナル回路

2. 左右独立電源で作ってみた

3. 使った部品と回路の説明

4. 12V電源で使えるように改造

5. アイドリング調整の裏技

6. 小型ケースとの出会い

7. ケースに合わせたPCBを発注

8. 最新の回路図

9. さっそく作ってみよう

10. 背の低い分から取付け

11. 終段と残りの部品を付けて完了

12. 通電して動作確認

13. ケースの加工

14. 配線を済ませてたら完成


1. Part2 12V版(簡単2段増幅)のオリジナル記事から引用してます

確かに、簡単だな。


2. このバージョンを最初に作った時は左右独立電源にしてた

ワシはこの時には12VのACアダプタを持っていなかったので余ってたはずの電源トランスが使えるように整流回路も搭載し、3端子レギュレータを左右独立で入れた形で作ったのだ。

参考にその時の回路図を載せとこ

片チャンネル分だけどブリッジ整流回路のところは共通で3端子レギュレータから左側の部分が、それぞれのチャンネルということで宜しくです。

オリジナルとの大きな違いは終段のコレクタ側に入ってる1Ω(デカップリング用の抵抗)が無いです、これは3端子を独立して左右に使ってるから不要と判断してのこと

それと負帰還用の抵抗が560Ωのままだと利得が低すぎる気がして1.1kΩにしてます(回路図には1kとしてるけど部品を付ける時に魔が差した)。

あっ そうそう このPart2 12V版もオリジナルの記事から年数が経過し今となってはディスコン部品が使われています。2SC4408が無いので代替品を探す必要があります、先日まであった2SC2655も秋月電子では欠品になり半導体不足の時代でもあるから今後は入荷しないだろと思われます。ワシは手持ちの2SC2655でも動かしてみたが音が弱弱しく感じたので気に入らず2SD882Lにしたら好みの感じになったのでこれでいきます。

どちらかと言うと簡単な部類ではありますが、初心者の方には難しい物でしょうね、でもPCB化したのでユニバーサル基板やラグ版での制作と比べたら格段に簡単だと思います。

とりいそぎ端折ってざっくりと説明するとPart2 12V版の初号機はケースに入れる事も無くPCBを簡易フレームに乗せただけで完成としました、完成後の画像がこちら


3. 使った部品と回路について少しだけ説明しとく

初段の2SA970のBLは入手出ずGRを使った、ここは2SA1015GRに置き換えても問題ない。

次段の2SC4408のデータシートを見たら2SA1680とコンプリなんだな、しかし完全ディスクコンで残念。それで手持ちの中からあれこれテストした結果は2SD882が良かったのでこれを採用。ベースエミッタ間に入れてる220pFはNP0の積層セラミックが無かったのでNP0の100pF積層セラミックを2個パラって取付けるようにPCB側で対応。

終段についてはhFE140以下の2SC4881は避けるようにと書いてあったが、気にせず130程度の低いのを使った。

抵抗について分かったことがある、最初は初段のバイアス用の130k・220kにはカーボン抵抗を使ってた、これは5%誤差の普通タイプなんだけど、これが曲者だった。各部の電圧が妙にズレているので全箇所電圧を測ったら肝心な初段のベース電位が想定値から離れすぎてる「0.2V低い4.3V」、回路の構成上はここが後ろまでモロに影響するので気に入らない。それで抵抗を取り外して測ったら公称値とはかなり違う抵抗値を示すではないか、計算してみると確かに5%以内なので不良品ではない。この0.2Vの違いを無くしたところで音質が変わるわけではないが気持ちは大事なので、金属皮膜抵抗に変更したら、きっちり4.5Vになり終段のところまでいい感じの電圧になり めでたし。


4. 12Vの電源で使えるように改造(いやいや本来の姿に戻すだけだろぅ)

このPart2 12V版は、その後12VのACアダプタを買ったので3端子レギュレータと整流器を取り外し、代わりに1Ωのデカップリング抵抗を付け、ついでにスパイクノイズ軽減のために470μHのチョークも入れて使ってます、しかも以前は終段と3端子にも放熱器を付けてたけど、それらも取り外すことにしました。

5. アイドリング調整の裏技

もう一つだけこのアンプには予想外の事があり裏技にて対処したのでお伝えしなくちゃ

12Vなのになぜか(15V版や19V版じゃあるまいし)アイドリングが100mA流れるんです、これには参ったな。終段とダイオードはエポキシでくっつけて固めてるので、ちょっと取り外して交換する気にならんのです。このままでも問題は無い、だが気になるんだな(何となく60mAくらいを目指していたので)、そこで考えて取った対策がバイアス用ダイオードを1か所だけ2個パラって使う方法、左右のチャンネルがあるので全部で2か所になりますが・・・

回路で書けばこうなりますが追加のダイオードはPCBの裏側にUF2010を半田付けしただけです。

ダイオードの特性を利用しているだけです、通過電流が減ると順電圧が低下することを利用しています。

これでアイドリングが60mAになりました、目標通りです。

アイドリングは100mAでも実際には全く問題ないのですが12V版には特に省エネを期待していたので。

だいたい ここまでがこのアンプの流れで、しばらく落ち着いていた(ワシの気持ちがね)ので手を付ける気は無かった、しかもこのままのPCBでキット化を考えていた。

とにかくいい音だなと強感した、よーく聞くと確かに15V版や19V版のとは違うけどなぜかこの音は好きだなって思う。難しいのばかり作ってないでこんなのもアリだなと思う、だからこれで完結のつもりだった。ケースに入れず部品丸出しなのも個人的には気に入ってる。

でもね出会いは恐ろしいね 悪い虫が湧いてしまった。


6. 小型ケースとの出会い

Amazonで何気に買ったこのアルミケースを眺めていたら、もしかしてここに入るんじゃない? って思ったのが事の始まり。 なんだか ここに入れてくれーって心に届いた気がした 。

このタイプのケースには溝があるのでここを利用したい

このままだとPCBは入るけどケースにネジ止めしなくちゃいけないな、そうするとネジ穴を開けるわけで、なんだかいやだな・・・

7. かっこよく仕上げるためにケースに合わせてPCBをデザインし直し発注

けっきょくこのケースの溝に合うように新たにPCBを作ってみました、これだとケースにネジ止めしなくていいし、ギリギリですがスピーカー用バナナジャックも付きそうだしってことで

サイズは外寸が38×88×110mmでPCBから天板まで27ミリ取れるので25ミリ高のコンデンサまでは搭載可能。

ちなみに新調したPCBはこちら、新旧を並べてみた、大きい方がこれから作るアレです

今回も抵抗類は全て寝かせるから作りやすいはず、ついでに信号と電流の流れを再検討し配線パターンも変更してみた。(PCBのサイズは83mm×75mm)

8. 最新の回路図はこちら、特に変りばえ無しですが何か

基本的にアンプ部自体に変更点は特にありませんが電源入り口付近のC9はPCBには実装できるようにしていますが試聴の結果とオシロで波形を観測しても何ら違いが無いので取付けません。※回路図内でC8は欠番です「キットにはC9/2200μはを付属してますからちゃんと取り付けてね」

どこで読んだか忘れたけど入力のC1(10μF)には50Vを使います、今までは16Vのを使ってますが、何かのはずみで16Vだと耐圧が足りない事があるような・・・思い出せません。先人の経験を尊重し10μF/50Vを使うことにします。

初段Q1は今でも2SA970GRだと入手しやすいのでこれを使います

次段Q2は2SD882L-Pを使います、UTC製でランクPのhFEは160-320となります。回路図上では2SD882Lのベース・エミッタ間に入れてるC4の200pFはPCB上では100pFを2個パラで取付けるようにしています「※200pFや220pFのNP0が入手できなかったので100pFをパラって使うことにした」ワシは100pFを1個だけ付けて済ませてます、精神的に気になる方は100pFを追加して200pFにすればいいと思います。「ここのコンデンサは積層セラミックを使っていますが電圧による容量変化をしないNP0型(メーカーによってはCH型と書かれている)を使っています。」

終段のQ3・Q4は通気口無しのケースに入れる計画なのでTO-220型が無難だろうと思い 2SC4935/2SA1869の組合せにした。今回ワシが使うトランジスタのhFE(室温21℃)は2SC4935が151、2SA1869が188で決して高くはない「むしろ高い物に出会ったことは殆ど無い」。hFEが高いと設計が楽だし、余裕分を安定性に回せるし助かるのですが、とにかく現代はリードタイプの部品自体が日を追うごとにディスコンになっている状況ですから、なんとか入手できるだけでも有難いです。


9. さっそく作ってみよう。

回路図の部品番号どおりにPCBにも部品番号が印刷されています、それぞれ該当箇所へ部品を挿して半田付け作業を繰り返すだけで完成に近づきます。

ちょこっとアドバイス

  • 半田付けをしていけば完成しますが美しく取付けるにはコツがあります、どの部品でも基板に部品を挿したら、先ずは片方だけちょこっと半田付けします、トランジスタなどは真ん中の足だけ半田付けし、美しい位置・角度になっているのか、極性等など付間違いは無いか、よーく確認し残りの足を、これまた軽く半田付けします。
  • 続いて不要な足を切り取って、本仕上げの半田付けをします。
  • 半田コテで部品の足と基板側の銅箔共に所定の温度に達したら半田がすーっと流れ込んでいきます。ワシの場合は左手の指を駆使して基板と部品と半田を扱い、右手で半田コテを持つんだが50年以上もやってるからね・・・ 一般的には無理だと思うので手が3本ある人とか、別の道具を活用して事前に練習をされると宜しい。
  • 半田コテで部品と基板側を熱して半田をそこへ持って行くといいです。
  • 先に半田コテに半田を乗せてから、そのあとで取り付け部分へコテを運ぶ人がいますが、それはダメです、それすると半田内のペーストが蒸発してしまいイモ半になりやすいし艶も悪いしでいいことありません。それと先端の細すぎるコテもダメです。

10. 最初は背の低い部品から取付け

いつもどおり背の低い部品から取付けて行きます。抵抗は全て寝かせているので1/4Wの抵抗を全て取り付けます、カラーコードを読んでも良いですけど金属皮膜抵抗は間違いやすいので(ワシだけかも)DMMで1本ずつ抵抗値を測って確認する方が確実です。

R9の180Ωは回路図では1/2Wとしていますが、けっこう熱を持つので実際は1Wを使っています。

抵抗類の取付が終わったら、C4の100pFを片チャンネルにつき1個だけ取付けます、100pFは101と表記されてます。それからC7フィルムコンの0.047μFを取りけます、この0.047は部品面には473と表記されています。

手持ち在庫の100pFの積層セラミックコンデンサは2.54mmピッチなので、取付前に5mmくらいになるよう事前に加工するといい。

無理やり穴に挿してグゥワーッと広げると稀にパカッと割れる事がある。

ここらで入力用のピンヘッダーを取りけておきます。

続いてQ1の2SA970GRを取付けたらC1(10μF)とC2(100μF)のケミコンを取付けます、この後でQ2の2SD882Lを取付けてひとまず終了です。

ケミコンの取付はPCBに丸い絵が描いてあり半分白く塗ったある方がマイナス側なのでここらも初心者には間違いやすいところかもしれない。

トランジスタの足の配列を載せときます。

ここまで取付が終わったら休憩します。

C4のコンデンサは1個だけ取り付けてるので、いまは100pFです。聴感上は2個付けて200pFにしても違いが分からないのでワシは100pFで使ってるだけです。

こんな感じの流れが高さ的に作業しやすい手順と思います。

11. 終段と残りの部品を付けて完了

次は終段とバイアス用ダイオードです、取付の向きを間違えないように念入りに確認してください。最後に残りのケミコンとチョークコイルを取付けたらPCB側は完了です。

バイアス用ダイオードはPCBから5ミリくらい浮かして取付けます、そしてシリコングリスを少し塗って終段と密着させるのがコツです。

クリックすると拡大表示するから取付向きなど確認してちょうだい。

一通りPCB側の作業が完了したので電源の線だけ付けてケースにスライドインさせてみた。

こんな状態ではあるがアイドリングと初段のベース電圧だけ確認しとく。

そして端子類をどう配置するか妄想を膨らます。

12. 通電してみよう

ACアダプタは秋月電子で買いました「12V 1.6A STD-12016U」。リップルが100mV以下とあり他のは200mVと書かれていたので、安いしマシなほうかなぁと思います。蛇足ですが15V用は「 STD-15016U 」です。

入力と出力には何もつながないで通電し動作確認をします

アイドリングはR11またはR12の両端の電圧を測る、部品間がスカスカなのでテスター棒も当てやすい。コールドスタートで74mVくらいあるな、電流に換算すると

0.074V(74mV) ÷ 0.68Ω = 108.8mAで約109mA

初段Q1(2SA970GR)のベース電圧は4.48V

アイドリングはその後、終段の温度上昇にあわせて減少し83mA程度で落ち着いてます。

13. ケースの加工

なんら問題なく動作していることがうかがえるのでケースに実装するための加工を開始

背面に出力用ジョンソンターミナルを4個、入力用RCAジャックを2個、電源用DCジャックを付けると7個の穴を開けなくちゃ、ワシはスイッチを付けない。

8ミリの穴を7個開けるだけなので簡単

パネル用は1.5ミリ厚程度で柔らかいです。

締め付けるのにレンチが入る間隔は開けたいものだ、そうするとこれくらいの距離がギリギリかな。それぞれは17ミリから20ミリ程度の間隔で配置してます。

端子類をつけるとこんな感じになりました。

各端子類を取付けてPCBからもスピーカーの線を出したりして再び取り回しを考えているのがこれ

ボリュームとLEDは正面に取付けようと思い思案中

ところがどうした事か、入力周りの配線を考えると、この状態はパッとしないので背面にボリュームを付ける事にした。

賑やかだな

これで正面パネルにはLEDが1つ付くだけ。

14. 配線を済ませたら完成

配線を終えて上から見たとこ、LEDは直径3ミリの緑色のを使った、3ミリのキリで穴をあけると少しきつくてギュッと押し込むと丁度いい。

配線については電源とスピーカーにはAWG20(0.5SQで直径0.8ミリくらい)を使い、入力用にはAWG24(0.2SQで直径0.5ミリくらい)で配線してます。多芯線で単線ではありません。

PCBは固定してませんが、配線で止まってます、密集しているような していないような

ボリューム周りがゴチャゴチャしますね、シールド線は使っていません。

そう言えば回路図にはパイロットランプの配線を書いてないよ、DCジャックのところから4.7kΩを通してLEDにAWG30程度の細いので配線しています。 「回路図には書いてないけどキットにはパイロットランプ用にLEDと抵抗を付属してます」

ボリュームは50kΩ2連で、アルプスの9mm角金属軸2連ボリュームAカーブRK0971210センタークリック付を使ってます。ギャングエラーが少ないということでお奨めです。

ケースへの1点アースはRCAジャックの所でしています、このケースはアルマイト加工はされていないと思いますが表面を削らないと電気的接触をしないので要注意。

このアルミケースは前後のパネルがネジで止めるようになっていますが、アルミが弱いため強く締めるとネジ山が簡単にダメになるので要注意です。

蓋をすると熱が籠りますが、終段が過熱しすぎる事も無く快調に使えています。


このPart2 12V版のキットをご希望の方はこちら


オーディオアンプに使うトランジスタはhFEを測定して左右のチャンネルで揃ったものを使うようにしています、とくにhFEの高い物を使うわけではなくて多数を測ると、どの半導体も妙に低い、あるいは高い値(使い道のない大当たり)を示すものがあります、そのバラツキの極端なあたりは使いません。この簡単2段増幅回路だと差動回路が無いので少し楽ですが平均的な範囲に分布するものの中から選別し左右用のペアを作ります。

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