ぺるけ式アンプのPart5 19V版

audio-etc
この記事は約14分で読めます。

ぺるけ式アンプの中からトランジスタ式ミニワッターPart5の19V版を作ってみた。

※ぺるけさんの公式サイトはこちら。

本記事で製作したアンプのキットはこちらです。

難易度★★★


目次

1. 19V版のオリジナル記事から引用

2. 旧記事での制作記

3. 19V版 初号機のご紹介

4. 初号機の問題と改善策

5. 電源部考

6. バイアス用ダイオード考

7. 最新のPCB(Ver4)でトランジスタ式ミニワッターPart5 19V版を計画

8. 組立前の初段の処理と電源部製作

9. アンプ部を製作

10. 完成後の動作確認

11. 雑感


1. 19V版のオリジナル記事から引用

ぺるけさんの公式サイトから、トランジスタ式ミニワッターPart5 19V版の回路図はこちら

ぺるけさんのサイトでこの19V版の冒頭に「少々手強いので初心者にはおすすめしない」ような事が書かれているがワシが思うにユニバーサル基板方式で真似して作るのはどれも同じ難易度ではないか?他人が作ったユニバーサル基板はどんなに頑張って説明しても配線を追いかけるのは難しい。


2. 旧記事での制作記

この19V版の制作記は、以前の日記に詳しく書いているので、ぜひそちらをご覧ください。(次のリンク先はクリックすると別窓で開きますがスマホ対応では無いのでスマホの方は見え辛いですごめんなさい。)

  1. ペルケ式ミニワッターの2 https://agc.ne.jp/?p=4714
  2. ペルケ式ミニワッターの3 https://agc.ne.jp/?p=4730

3. 19V版 初号機のご紹介

以前の制作記を読んでいただいたとして話しを進めるよ。

おさらいとして初号機の回路図と完成時のケース内画像を載せておきます。

回路図の方はクリックすると別窓で大きく表示します。

電源部はこれです

この電源トランスは共立エレショップで売ってるHDB-25(L)で、12V/1Aが2系統あるトロイダルトランスです。12Vの交流を倍電圧両波整流し±13.7V(負荷時)の直流を取り出してレギュレータICに入ります、レギュレータ出力の±9.3Vは綺麗なので、とりあえずセーフとしておきます。


4. 初号機の問題と改善策

なんやかんやで今はPCBがVer4となり、いっそのこと初号機19V版も丸ごと作り替えるのもありだが部品がもったいないから、電源部の変更とアンプ部はちょっとだけ部品を替えて完成としよう。

ぶっちゃけ、この19V版だけ、他のミニワッターと比べたら抜きんでて音が悪いんだよねその最大の原因は電源部だとワシは睨んでおる。

以前にネットの記事でトロイダルコアの電源トランスはオーディオには向かない(音が悪い)というのを思い出した。ケースが小さくて、どうしてもEIコアのトランスが入らないから仕方なくそうしたんだけど、これが初号機を作り終えてからずーっと胸につかえていた。

  • 電源部はいままの実験で疑似流電源で十分によい音が出せるのが分っているので、3端子レギュレータ方式から疑似両電源に変更
  • トロイダルトランスは外して19Vのスイッチング電源と入替。※これはノートPC用のACアダプタを利用、ただし充電目的の為か出力は品質が悪くノイズが大きいです

NECのノートPC用ACアダプタを利用

ノートPC用のACアダプタはプラスチックケースをカパッと割り入出力の配線をしています。この金属部分がケース側と接触しないように用心しないと疑似両電源が燃えちゃいますよ。

15V版用とは定数が異なり19V版専用の定数となっています。

Q3のリレー代わりの回路は0.15Vほどロスる

一度にあっちもこっちも変えると、何が影響していたのか分からなくなるから、最初の変更はアンプ部の方から。

まずアンプ部の終段トランジスタとバイアス用ダイオードを変更し視聴する。

  • 2SD2012/2SB1375 の音は好きになれず(個人的な好み)で2SC4881/2SA1931に変更
  • 1NU41からUF2010に変更(※1NU41の順電圧はUF2010よりも高い)

これでアイドリングは最初の138mAから110mAになりアイドリングについてはOK、終段の変更で音の感じは好みに近づいたが何かが今一つパッとしない、この違和感はなんだろう。 やはり気になっていた電源がマズいのだろうか、電源部は先の通りスイッチング電源と疑似流電源に変更をした。

結果はとても良好で、ようやく長時間聴いてても違和感なくいい感じで鳴るようになった。

ってことは

最初っから電源部については余計な事を企まなきゃよかった ってことか

遠回りをしたが、いい勉強になった。


5. 電源部考

初号機での失敗はトロイダルコアの電源トランスと整流方法がオーディオには向いていなかったのだろうと反省、しかも3端子レギュレータで目的の電圧を得る方式なので直列型安定化電源の効率の悪さも重なり発熱も相当あった。電源部の効率の悪さと大型化を気にしなければ将来はEIコアまたはカットコアのトランスで再チャレンジしてみたい。

疑似両電源が悪いわけじゃなく、左右共通にしているから低域のクロストークが避けられないのが気になるだけの話し。スイッチング電源と疑似両電源の組合せは、なかなか効率がいいので省エネなのが嬉しい。もう一段突っ込んで試すなら左右別々の疑似両電源とすれば楽しい結果が待っている気もするのはワシだけか。悶々と考え続けると終いには金田式アンプみたいに電池を使った電源回路に行ってしまう。


6. バイアス用ダイオード考

ランダムに取り出したそれぞれのダイオードの順電圧を参考として載せておきます、これは室温18℃で40mA流した時のデータです、夏場の室温25℃の時より高めな値になりました。

  • 1NU41は0.86V
  • 1S2076Aは0.84V
  • 1N4148は0.83V
  • UF2010は0.82V
  • 1N4007は0.77V
  • PG2010は0.74V
  • ファストリカバリーは0.6V

あくまでもランダムに取り出したので数値そのものはバラツキがあり絶対ではありません、計測時の室温や環境での変化もかなりあります、大事なポイントはこの傾向は変わらないということです。

ダイオードについては、呆れるほど測っているので分かってきたことはそれぞれ個性がありPG2010は順電圧が低い傾向なので期待したのですが温度変化と電流・電圧特性がリニアな変化ではない様子で使う気になれない妙なモノでした。(なぜか音が悪くなる)

試した中ではUF2010が温度変化に対して素直な特性を示し簡易なバイアス回路には向いている気がします。

1N4007は温度変化に過敏な傾向があるのですが、実際に終段に貼り付けてみたら特性変化のバランスが悪くアイドリングのコントロールが期待するほどできずガッカリしました

終段に使うトランジスタのVbeとも関連するしエミッタ側に入れている抵抗の0.68Ωを含めて動作点の設計によってベストな組合せも変わるはずですから、全てのSEPPアンプに当てはめることはできません。

ぺるけさんとこのトランジスタ式ミニワッターの共通点はドライバー段を30mAまたは40mAで設計されているため、この場合に限ってはUF2010がベストなのだろうと判断しました。



7. 最新のPCB(Ver4)でトランジスタ式ミニワッターPart5 19V版を計画

さて、Ver4のPCBを使ってトランジスタ式ミニワッターを作ったらどうなるのかやってみよー。

電源部も含めた全体の回路図はこちらです

電源部はリレーを廃止してトランジスタ制御としたのがぺるけさんのオリジナルからの変更箇所です。Q3(2SA1359-Y)のベース側R10が1.8kΩになっています、15V版では2.2kΩですが19V版では計算上は2.7kΩでいけると思っていたのですが試したところ電圧ドロップが0.19Vあり負荷の電流に対してQ3のベース電流が足りていない様子だったので1.8kΩにしました。これだと0.14Vの電圧ドロップとなりました。ここに使った2SA1359-Yは選別で漏れたhFEのとても低いのを使ったせいもありますが諸々のバラツキも考えて、15V版用の方も今後は2.2kΩから1.8kΩにしようと思います。

アンプ部は、初段を2SK2881Eに変更(ディスコン対策)、次段定電流回路のR12(140Ω)とD1(1N4148)そしてD3・D4をUF2010にしています。バイアス用ダイオードのD3・D4をUF2010にしたのは、1NU41だとアイドリングが無駄に増えるだけなので使いません。終段のトランジスタは2SC4881/2SA1931を使いました。

※次段の定電流回路に使っていた1S2076Aは値段が高く入手しにくいので1N4148に変更し、それに合わせてR12の抵抗値も変更しています。

作り方やPCB上のチェックポイントなどの詳細は15V版の方を参照願いたい

電源部とアンプ部で使う部品一式を並べるとこんな感じ

  • R=47本
  • C=28本
  • TR=17個
  • Di=7
  • PCB=2枚
  • その他

19V版もPCBのおかげで効率よく作業を進める事ができます。

回路図の部品番号とPCBに印刷されている部品番号をよく確認しながら所定の取付穴に差し込み半田付けするだけなので作業自体はとても簡単です、付けまちがいが無いように部品チェックリストも使って慎重に作業を進めるので少し時間はかかりますが確実です。



8. 組立前の初段の処理と電源部製作

では、初段をエポキシでくっつけるところから始めます、2SK2881は小さいので作業しにくいです、今回は方法を少し変えて2つの2SK2881を貼り合わせ位置を決めたらラジペンで軽く挟み接合面に瞬間接着剤を極少量流しズレないようにしておいてから2液混合のエポキシで仕上げました。

エポキシが固まるのに凄い時間がかかる(ワシが使っているのは6時間過ぎたころから実用強度になるみたい)ので、その間に電源部を完成させチャッチャッと電圧を測って異常が無い事を確認し電源部は終了。

2SK2881の固まり具合を確認したらフニャフニャなので本日の作業はこれでおしまい、続きはまた明日。

  1. 取付手順は背の低い部品からです、最初に取付けるのはワット数の大きい抵抗です、全て寝かせているのでこの6本を取付けます。
  2. 次にZD6.8Vを取付けます、カソードの向きに注意して間違わないように。赤枠で囲ったところがツェナーダイオードを付ける場所です。
  3. 次は1/4Wの抵抗を取付けます、全部で5本あります。
  4. Q1・Q2・Q3を取付けますがQ1とQ3のTO-126型は取付の向きに注意しないと反対向きになる可能性が有るため必要以上に注意して取付けます、黄色で囲った2か所です、2SC3422と2SA1359を取り違いしないように。
  5. LEDはピンソケットで接続するのでPCB側にピンヘッダーを適当なタイミングで取付けるといいです。
  6. 残りの部品を付けて電源部は終了

この電源部で使う2SC3422と2SA1359はTO-126型です、印字面に向かって左からエミッタ・コレクタ・ベースの並びです。

でき上った19V版用の疑似両電源に仮配線して最終確認を終えた図


9. アンプ部を製作

一晩おいて初段のエポキシも固まっているので今日はアンプ部の制作です、自分で作った部品取付順リストを見ながら作業を進めました。

ここでも背の低い分から取付けるのがセオリーです、回路図の部品番号に合わせてPCBの番号のところに取付けて行きます。

終段のトランジスタとバイアス用ダイオード、そして3300μFのケミコンは最終工程で取付けます。

間違えたり忘れそうなところを画像で紹介しとく

使わないD2のジャンパー処理 このジャンパー処理が左右チャンネル分の2か所ある

19V版の特徴の一つは、この次段のトランジスタが大きいこと。しかも向きを間違えやすいのもこの次段のトランジスタだと思う。

画像に向かって右側が正面です、ネジ穴の左右に半円のくぼみもあります。

左側が裏側です、比較的つるっとしてます。

正面の型番等の印字は薄くて読みにくいですが、この正面に向かって左からE・C・Bの並びです。

黄色で囲ったところが次段の2SA1359を取付けるところです、2SA1680のようなTO-92だとPCB上の印刷の形で識別できると思いますが、平たいTO-126型は取付向きを間違える可能性が有ります。ここにTO-126の2SA1359を取付けます、向きは2SA1359の正面同士が向き合うようにすれば正解です、四角いランドが1番でありエミッタとなります。

2SA1359をPCBに取り付けると1ミリほど離れています、「熱結合させない人はこのまま使うのもアリ」、熱結合をさせたい時は平ワッシャーを2枚挟んでネジで締めるのもアリ。

ここまで来たら残りはあと少しだな。

終段の放熱器は邪魔なピンが2本でてるから大きめなニッパーで切り落とすか、ペンチでコネコネしながら抜き取っておく。

たぶん抜くのは辛いから切り取った方が早いと思う。

終段のトランジスタは青枠の所です、向かって左からB・C・Eです、四角いランドが1番の印しで、この本機の場合はベース(B)です。

2SC4881/2SA931や2SC4935/2SA1869などは2SA1359とは足の並びが反対なので用心してください。

型番が印字されてる方が正面で、向かって左からB・C・Eです。

終段の取付向きとダイオードの取付高さや向きにも注意して作業をする。

ネジは無駄に強く締めない事

ここでも終段用バイアスダイオード(D3・D4)は基板から5ミリくらい浮かして取付し終段と密着させます、放熱器はPCBの下側に少し出っ張ります、 終段とバイアス用ダイオードを取付した様子がこちら。

そんなこんなに注意しながら慎重に作業を進めるといい

クリックで拡大別窓表示

なんとなく2SA1359-Yをネジで締めてるのは んー ぶさいくやなぁ

残りのコンデンサを8個付けたら電源部と接続して電圧を測ってみよー


10. 完成後の動作確認

電源とアンプを繋いで動作確認をする準備

チェックポイントは終段のアイドリングとDCオフセット電圧の2項目、左右チャンネルがあるんで忘れんように。入力はショートしてノイズが乗らんようにし、スピーカーは繋がんでえーよ。※終段のバイアスダイオードなどの極性ミスなどあるとスピーカー破損の可能性もあるため、それなりに用心しておくれ。

  • 終段のアイドリングはR17またはR18の両端の電圧を測ります
  • DCオフセットはSP_outとSP_E(GND)間を測ります

電源投入直後にR17の両端電圧は104mV(左右ほぼ同じでした)、DCオフセットはLchが-1.7mVでRchが+0.7mVでした。終段が十分に温まるとアイドリングは80mVくらいで落ち着きました、その時のDCオフセットはLchが-2.5mV、Rchが-0.3mVでした。さらにその1時間後も似たような数値でした。

アイドリング電流を計算してみよう

0.08V(80mV)÷ 0.68Ω = 117.6mAってところでしょうか

DCオフセット電圧について次段を熱結合させた状態と、そうでない状態の両方で試したら、とくに安定性に違いが無いので何もしなくていいと思われ、現在はネジを外してすっきりした状態で使ってます。

ここで無駄な「ちょこっとアドバイス」

初段のバランス調整用に使ってるRV1の多回転ポテンショメーターはメーカー出荷時に、まあまあ真ん中になってるみたい、たぶんネジの回転数での真ん中あたりなんだと思う。だけど測ってみると抵抗値としてはズレてて真ん中ではない、興味ある人は取付前に測って抵抗値としての中点にセットしてから完成後にDCオフセットを測ってみると面白いかも・・・。

【試聴の印象】

作りたての時は15V版と同等に感じたのですがエージングが完了したのか、19V版は低域の出が良いですね。製作記事を書く予定のない正負両電源仕様のPart6 12V版も作ってまして、12V版・15V版・19V版の3種類で言うと12V版が全体的に平坦な感じで15V版はバランスよくまとまっている感じ、19V版は15V版+低域の力感があり音の立ち上がりもいいように感じます。

2SC4881/2SA1931と2SC4935/2SA1869はよく似た音で鳴ります、2SD2012/2SB1375の時は朗々とは鳴るが好みの音楽性は感じられずガッカリしただけでした(個人的見解です)、それと比べると前者は深みやしっとり感を感じられて好みの印象です。


11. 雑感

PCB化したことで、確実に完成させることができます(部品の取り付けミス等をしなければの話し)。

組み立てる作業よりも部品の選別の方が遥かにしんどいです、特に2SK2881のバラツキが激しく選別漏れの山となり行き場のないロスがテンコ盛り、UF2010もバラツキの範囲が広くて狙ってるアイドリング電流用に使えるペアは意外に少なくて選別ロスが増えるばかり。アイドリング調整用のボリュームでも入れる設計にするのも考えたけど長期安定性が低下するから信頼性を考えると、このシンプルな構造がベストで痛し痒しってところです。

それと、終段に使った2SC4881は長期在庫品なのでしょうね、リードに錆が出ていて半田のノリがそのままでは悪すぎるので、取付前に丁寧に錆を落として半田メッキしておかないと、イモ半になります。これを無理やり半田のノリをよくするフラックスを塗って無理やり取付けるなんていうのは愚の骨頂です。

いままでかなりの台数を作りましたが丁寧に選別した半導体を使うと、殆どの場合無調整でいいくらいの仕上がりです。


精密に選別した半導体をセットにしたキットはこちらです

コメント