4BAND_SSB_Transceiverを作る2

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4BAND_SSB_Transceiver_MainUnitB
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Main_Unit_Bの製作開始

ようやくMain Unit Bの製作です、回路全体の中で今回製作するのは次のダイアグラムの範囲です。

簡略化すればいいのですが、ついでなので少し頑張った構成になりました。

以前に決めかねていたSメーター用の回路はオペアンプで必要な出力を取り出すようにしました
だけど、機械式メーターにするか液晶表示器にするか決めていないので、どちらでも対応できるように2種類の信号を出力しています。

それと、IF段へのAGC電圧はマイナスまで振るようにしたためマイナス電源が必要です
これもついでにこのユニットBに載せることにしました。

マイナス電源は+12Vから作り出しています、タイマーICのNE555Pの発振出力を整流し、そこから目的の電圧になるよう1N4148をツェナー代わりにして実現しています
1N4148を2本直列にして実質マイナス1.4Vを作り出しています

NE555Pを使った負電圧発生回路は、たまたま周辺の回路定数との兼ね合いでしょうか? 23KHz辺りで効率が良かったです
5KHzから100KHzまで何通りかテストしましたが結果的には20KHz前後がいい結果でした、
その他はデューティ比もアレコレ変えてみましたが50%が効率良いみたいでした
回路の定数では50%ではありませんが手持ちの部品の都合に合わせています
効率が悪いと無駄に消費電流が増えるので、それで判断しています。

Sメーター用の電圧を取り出すのに単電源オペアンプのLM358Nを使いました。
片ユニットはボルテージフォロワとしてAGC回路から入力をもらい、残りユニットで反転増幅(利得1)して出力しています。
テストしていて気付きましたが単電源で使うと0.6V以下には反応しません、
オペアンプの入力トランジスタが動作するのには0.6V以上が必要(単電源で使うと宿命だと思います)なため当然の結果です
それで、先ほどのタイマーICで作ったマイナス1.4VをこのLM358Nの4番ピンにかけて正6V負1.4Vで動作させることで良好に目的の動作をするようになりました。

個別の実験時はAGC回路の電源供給に5Vの三端子を使っていましたが下駄を履かせるのも面倒なので本番用は最初から6V出力の三端子に変更しました。

このAGC関連の回路を抜き出すと次のようになります

※そういえば以前にアップしたAGC回路の中で三端子レギュレーターの入出力の向きを間違えたまま載せていましたが今回は修正しています。

2nd_Mixerの使い方

NJM1496Dの出力は今回はシングルエンドで使うので2系統を別々に使えます
1つは送信用に使い、残り1つは復調出力に使います。

2nd_Mixerは復調と周波数変換として働きます、バラモジてもないのにキャリアバランス用の調整ボリュームは残してあります、ここでの用途の場合は一般的にバランス調整を省略することが普通になっていますが、IF段へのBFOの漏れがAGCの動作にとって問題になることが多いので、それを最小にするためにバランス調整ができるようにしています。

受信時の復調出力はNJM1496Dの6番ピンから取り出しR37の2.2KΩが負荷対抗ですからインピーダンスも2.2kΩとして考えます、送信時は12番ピンから取り出しています51Ω(R39)と2.2kΩ(R38)が直列になっていますがコンデンサで51Ωの電源ライン側をバイパス(C33)しているため負荷インピーダンスは51Ωとして扱えます。

AF用LPFの件

受信時の流れはNJM1496Dの復調出力はLPFに入ります、このLPFはMAX294を使いました。
データシートを見ながら思ったのは、ちょっと使ってみんと癖が分からんねぇ
内部の回路を利用した自励発振で上手く行くのかな? それにその時のコンデンサ容量はどうなん?
とにかく、ここもバラックで試してみました
発振周波数についてはデータシートに計算式が載っているのですが、参考程度にして実測してみると希望とは少しずれた結果が出ました、回路図は次の通りです

目標とする帯域と言うか高域の減衰開始ポイントはSSBの受信用には3.2KHzを目指します、
実測してみたら、マジですごく楽しいと感じるほどガンガンに減衰特性を示します(とは言っても-50dB程度ですが)、とても急峻に減衰するので高域がいつまでもひつこく聞こえてくることは無いはずです。

計算上は100pFで3.3KHzになるのかと思ったら、実測すると2.95KHz辺りから減衰を始めます
それで試したところ(82pF//10pF=92pF)92pFで目標の3.2KHzとなりました
92pFから逆算すると3.6KHzになるんですけどストレーが影響しているのでしょう。

そしてCWの時もクリスタルフィルターがSSBの帯域のままなので気休めにMAX294でバッサリ切ってみることにしました
とは言え、狭帯域は必要無いので(個人的意見です)1.2KHzから減衰が始まるようにしています
切換はデジトラで追加のコンデンサが並列に入るようにしています。(92pF//180pF=合計容量272pF)

データシートの計算式は

発振週数(KHz)= 10^5 ÷ 3C(pF)
 MAX294の1番ピンに入れるコンデンサの容量がCです

MAX294の場合、希望するfcの100倍のクロックが動作条件になっています、外部クロックだとストレーの影響を考慮しなくていいはずなのでfc3KHzなら300KHzを入れるといいってことです。

ついでにデータシートを見るとオペアンプ回路が1つ入っているようで、
使わなければ3番・4番ピンをショートしておき5番ピンが出力になります、
しかしLPFを構成するといいよとデータシートに書かれています、入力側にいれるか出力側に入れるか迷いました

内部クロックが信号ラインに乗っているかもしれないので積極的にLPFとして利用するのが得策と思い出力側に入れました、回路図の定数だと計算上のfcは3.34KHzです。
電源ラインへのクロック漏れは抵抗とコンデンサのデカップリングで十分に減衰できました。

このMAX294は約6.5Vで動作させています、10Vとかでも試しましたが問題なく使えます
とりあえず5Vで動かして入出力を観察したらデータシートに書かれている通り
5V辺りまで入力信号を上げても波形は崩れませんでした、つまりNJM1496Dからの出力が大きすぎて歪むことは無いと考えられます
それよりも気になったのはMAX294が安定動作に入るまでには時間がかかことです
電源投入から数秒かかります(入出力の波形を観測しながら何度も試してみました)、これからMAX294を使う方はくれぐれも送受切替に対してここの電源のオンオフはしない事です。

続いてMAX294のLPFを出た信号はオペアンプの4580DDで増幅しています(単電源で使っています)
トランジスタ式にしなかったのは、オペアンプの方がレベル配分の設計が楽です。

CW用Side_Tone回路の件

このあとCW用にサイドトーン回路の出力を割り込ませています


回路のとおり単純にツインT型発振回路です、この回路もなかなかの曲者です
歪むことで安定発振を継続できると何かに書いてありました
動作させるための定数によってはかなり歪んだ出力になります、つまり澄んだ音では無いということです
発振信号はエミッターから取り出しています、エミッタ抵抗R45は15KΩです、間違いでは無く15kΩという高抵抗にしています。
念のため、ここもバラックでテストして気に入った波形と音調になるように定数を決めました
最初は700Hzで発振させていたのですが音を聞くとサイドトーンとしてはもう少し高い方が心地よいので(個人的印象です)760Hzにしています。
800Hzでもいいのだけど、CWの送受信のシフト幅を700Hzにする予定なので、あまりかけ離れたのは使い勝手が悪いと思いそうしました。

そしてボリュームを通りAF_PA用のTDA2030へと続きスピーカーを鳴らします。


このTDA2030は12Vでも動きますがギリギリですね、ボリュームを上げると思ったより低い出力で音が割れ始めます
12Vラインを13.8Vにするつもりはないし、電源トランスもケース内に内蔵させる予定なので安定化前(整流直後)の高い電圧をかけることにします
こんな使い方をしても別の機器で実践済みでハムも出ず良好です、それで+16Vとして回路図には記載していますが20Vくらいになっても問題ありません
注意するべきはコンデンサの耐圧だけです。

持論であり蛇足ですが、ネットを徘徊していると高周波段は丁寧に設計されているにもかかわらず、ここのアンプに386を使う方が意外にも多く驚きます。
小型化のために利用することもありますが、よほど理由が無い限りは少なくとも2Wから3Wくらいは楽に出せるアンプで構成する方が後悔しないで済みます。
30年くらい前に14メガ帯のSSBトランシーバーを作った時にLM386を使いましたが室内では特に不便を感じませんでしたが、屋外に持ち出して使ってみたら音量の小ささに驚きました、ボリュームを上げると歪が目立つし音が割れるし、386が発するノイズの多さにも落胆しました、このAF段のパワーアンプも手抜きは禁物です。

送信時の動作について
前述のとおりNJM1496Dの出力インピーダンスを50Ωにして取り出しBPFに入れます
BPFの後ろは簡易なプリドライブを設けました


BPFとプリドライブの間に3dBのパッドを入れてインピーダンスのアバレを吸収しています
このBPFは8Vと12Vが要るんですが今回は基板サイズの都合で抵抗1本で12Vから8Vに降圧しています
これはUnit_Aを作って実測した結果から回路の動作時の電流が分かっているので20mA流れたら4V減衰するよねってことで200Ωの抵抗1本で済ませています。

プリドライブにはFETを使ってみました、トランジスタの方が簡易な回路で済むと思いますが、何となくRD01MUS2を使ってみたかっただけのことです
RD01MUS2はデータシートを確認したら7.2V動作が標準のようなので簡易なレギュレータで8Vを作り供給しています。
冷静に考えると、ここの信号レベルでは過剰サービスも甚だしい無意味なことだと自覚しています。

とりあえず動作的にはFETなのでゲートのバイアス回路でオンオフの切り替えができるはずです
このFETはSMDチップなので基板にベタ付けして放熱も基板任せです、大きな出力を狙っているのではなくて、ドレイン電圧8Vで50mA流そうと思っているから、それなりに熱は出ると思います

全体的に今回のMain_Unit_Bの基板サイズをMain_Unit_Aと同じにしたかったので最初に描いた回路図よりも回路を省くことになりました
最初の自分の思惑通りで進めると部品が乗りきらないのです
それでレギュレーター回路やらデカップリング、その他細かいところなど部品の配置をしながら間引いたり配線の取り回しを変更したりして
無理が無い程度に調整しながら基板を考えました。
最初から厳しいと思っていたのでできるだけ部品間を詰めながら配置したのですが、最後の頃にはスペースが余ってしまい気持ち的には不細工な基板になりました。

部品番号のシルク印刷をしないのであればもっとギュウギュウ詰めにできるのですが部品を付けるときに間違える可能性もあるためここは省略できないなってところです。

今回の個別にテストしながら進めてきたモノをMain Unit Bとしてまとめたのが以下の回路図です
実際に部品を付けていく段階で回路図とは少し違う定数に変更しています。
作っている最中にいろいろ考えているとあーでもないこーでもないって感じで気の迷いが生じる結果です。

回路図をPDFでご覧になる方はこちら

とりあえず注文していた基板が届いたので部品を一通り載せてみました。

最初は基板から配線を、もっと少ないコネクタ(ジャック)で済ませようとピン数の多いのを回路に書いていたのですがパターンの取り回しに無理があるので、回路が合理的に完結できるようにコネクタ数を増やしました。
それと、向かって左上の放熱器はAFのPA用です、コの字型のものを背中合わせで2つ使っています。

いずれにしても実働テストしたら少しは定数の変更があると思いますので調整編で最終的な回路をアップすることにします。

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