3 月
08
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MS-210Jというスピーカーの修理をしました。
アンプ内蔵のステレオ・スピーカーです
このMS-210Jは僕のではなく友人のモノです
なかなか手に入らなくてようやく買えたようなことを聞きました
すげー人気があり品薄だとか・・・ 僕には分かりません
症状はスイッチを入れて数分以内くらいで異常な音が出始めます
スピーカーに付いてるボリュームとか入力の有無に関係なくそうなるとの事でした。
とりあえず、持ち帰り消費電力を測ったら13Wから20Wくらいです
これはその時の調子で変動しますが少なくとも14W以上食ってる時の方が多かったです。
製品としての定格出力は知りませんが完全A級アンプでも組んでるのかなって思いました。
スピーカーの中にアンプ類も入ってるので取り出して調査開始
Power ICが使われていますね、デジタルアンプじゃなかったので個人的にはガッカリです
基板は見ての通り チャンガラです
ICの型番を見たらTDA2030ALと書かれています
放熱器への取付も面白いですね
シリコングリスはIC周辺にバカみたいに塗りたくってますが、肝心な所に塗ってる気配がありません。
全部つながったままスイッチを入れて放置すると放熱器が触れないほど熱くなります
検温したら100度超えてました
とてもじゃないけど、このスピーカーボックス内でこの温度は放熱できませんね
つまり熱暴走するだけです、いま正に熱でぶっ壊れるところなんだろうなー
そんな下らんことをブツブツと唱えながら思考を進めます
まあ、いろいろありますけど修理する前にい、いくつか考えておく必要があります
なぜ こんなに熱いのか
それは正常なのか異常なのか
これが普通ならこのMS-210Jを買った人は全員使い物にならず返品の嵐のはず
TDA2030を知る必要がある
TDA2030ALのデータシートをネットで探してメーカーのサンプル回路と合わせて検討しました
その時に、実はTDA2030を使ったアンプは人気があるらしいという事を知りました
いつもの僕の癖で へー こんなものがねって感じです
本題はデーターシートを見るとTDA2030のアイドリング電流は50mA程度ですから
電源電圧から考えて1個当たり1.5W 2個で3W 電源トランスの消費を考慮しても
音が出ていない時はせいぜい全体で4W以下に収まると思いますが
スイッチを入れるといきなり14Wだったり20Wだったりと激しいです
このTDA2030を使ったオーディオアンプキットもたくさん見つかりました、どれを見ても放熱器が小さいです
とても20W近い装置の冷却には使えない小さな放熱器が使われていて
このことから考えても、やはり異常が発生していると考えられます。
さて、問題はその原因ですが、ここからは推理が必要です
- 異常発振を起こしている(これは耳では聞こえない高い周波数での発振です)
メーカーのデーターシートでは発振止めの部品を付ける事を推奨していますが本品には省略されています。 - 異常発振の原因にもなるのですが、回路全体の利得を上げ過ぎているのではないか
CR型の簡易イコライザーが組んであるのでロスを補うのに無理してる気配 - TDA2030が不良品(片チャン、それとも両チャン)
- コンデンサーリーク
- 電源のインピーダンスが高すぎ(コンデンサー容量抜けか?)
深追いする程のネタでもないので結果をお伝えすると
両方のスピーカーから音は出せるのですがTDA2030ALが1つ不良になっていたので交換し
念のため利得を少し下げるために負帰還用の抵抗を交換しました。
修理後の写真とか、基板を見ながら書き出した主要部分の回路とかは以下の通りです。
ここの、背面には入力がRCAとミニジャックの2系統ありますが独立しているわけではなく、単純に並列接続のため、どちらか1方だけにプラグを挿して使うようにした方がベストです。
片チャンネル分だけ基板を見ながら書き出してみました
±15Vの両電源構成です、最小限の部品で構成されています
調べたら不良になっていたICは1個だけでしたが、入手できた部品の都合で念のため2個とも交換しました
TDA2030AL から TDA2030Lに変更し 47KΩは33KΩにしておきました。
これでアイドリング時は全体で3Wに収まり不必要に過熱しなくなったので完了としました。
ガンガン音を上げていくとそれなりに電流が流れますので、この製品はどっちにしても大音量で長時間聞くことは難しい気がします。